「オバマは穏健派(moderate)として登場し、2期目になって本当の姿を見せ始めた(reveal who he really was)。すると穏健派の多くの人びとが、『彼は才能があり、頭もいいが、これは私たちが国を向かせたい方向ではない』と気づき始めた。振り子が反対方向に戻す必要があると感じている所に、トランプが登場した」
「それがあったと思う。特にヒスパニック系の有権者は民主党を支持して当然と、民主党にみなされてきた。共和党も含めて両党が、ヒスパニック系の有権者を軽視してきたが、支持の動向に関しては、民主党は何が起ころうともヒスパニック系の票は確保済み(the Democrats always thought that they had the Hispanic vote secure no matter what.)と常に考えていたと思う」
「また、米メディアはマイノリティーを一枚岩(monolith)に描きすぎてきた。一枚の毛布(a blanket)のようだ。全てのヒスパニックが同じであるかのように扱う。毎年ある時期になると、ヒスパニック文化遺産月間(National Hispanic Heritage Month)を祝う。黒人も同様に祝う。でも私たちはそんな段階を遥かに過ぎて(We've moved way beyond that)、多様になっている。私の家族には、頑固な民主党員もいれば、私のように共和党にも共感する人もいる。私たちは皆ヒスパニックだが、ロボットのようにプログラムされているわけではないので、考え方はそれぞれ異なる。リベラルな報道機関や沿岸部のエリートの姿勢には、ヒスパニックがよくも共和党候補に投票したもんだ、と貶められているように感じる。愚か者だ、IQが低い、と言われたような気分になる。非常に侮辱的だ。実際には、非常に知的で、たまたま独立した思考力を持つ人たち(independent thinkers)が、100%民主党でも、100%共和党でもなく、ベストな候補者(としてトランプを)を選んだだけなのに」
[1]米税関・国境警備局(CBP)によると、南部国境に正規書類を持たずに姿を見せた中国人の数は、2022会計年度は2200人、2023会計年度は2万4300人、2024会計年度は3万8200人と急増した。超党派のシンクタンク「移民政策研究所」は背景として、①中国で深刻化する社会的・経済的課題に加え、グリーンカードの取得期間の長期化、中国人に対する就労・学生、その他の長期ビザの審査強化、②言論の自由と宗教の自由の抑圧、③米国とメキシコの国境の通過方法を解説するTikTokなどのプラットフォーム上の指南動画がある、と分析している(The Migration Policy Institute, Madeleine Greene and Jeanne Batalova, “Chinese Immigrants in the United States,” January 15, 2025) [2]国勢調査局によると、ロマ市の貧困率は34%超で、テキサス州(11%)や全米(14%)より深刻だ。筆者が2015年以来取材してきた中西部ラストベルト(さびついた工業地帯)にあるオハイオ州ヤングスタウン(36%)や同州ウォーレン(33%)に匹敵する。 [3]市長エスコバルが幼少期、1988年の大統領選で「なぜ私たちは民主党員なのか?」と母親に尋ねたところ、「それは、民主党が貧しい人々、労働者階級のために活動する政党で、私たちは、人々を助ける政府のプログラムを支持しているから」と教えられたという。市長は今も政府プログラムを支持するが、人々の地位向上を一時的に支援する施策であるべきで、半永久的に支援するものではないと考えている、と強調した。 [4]市長エスコバルによると、市長選では党派を示しての選挙戦を展開しないのが一般的で、自身も「民主党候補」として当選したわけではないという。 [5]米社会での近年の変化の一つに、このプロナウン(人称代名詞)の使い方がある。多様な性自認の形が広がる中、従来の人称代名詞「she(彼女)」や「he(彼)」は性自認と一致しないと感じる人びとが、より正確に表現するために「they/them」などを使うようになっている。個々人の性自認を尊重し、誰もが暮らしやすい社会を形成するための取り組みと認識されてきたが、一方で、外見や名前だけで判断して「彼女は」とか「彼は」と発言すると、「間違い」とされる可能性があり、戸惑う人びとも少なくない。自己紹介で、自分の代名詞を明示する必要があるか、公教育の現場で、女子用と男子用以外の第3の更衣室を用意するべきか、など具体の判断をめぐり議論がある。詳しくは第3部で触れる。 [6]米国立公園局によると、ホワイトハウスが虹色にライトアップされたのは2015年6月26日の夜。この日、連邦最高裁は、米国のすべての州で同性婚を認める判決を言い渡した。同性カップルが結婚する権利は法の下の平等を掲げる米国の憲法で保障されていて、これを禁止する法律は違憲だと判断した。オバマは「判決は、大勢のアメリカ人が心の中で既に信じていることを裏付けた。全てのアメリカ人が平等に扱われるとき、私たちは皆、より自由になる」と歓迎した。White House Lit Up With Rainbow Colors in 2015, The White House and President's Park [7]ニューヨーク・タイムズによると、民主党候補ハリスは大統領選キャンペーンに、15億ドルを費やした。最大の支出は広告費で、7月21日から10月16日までの間に、テレビ広告とデジタル広告向けのメディア制作や購入に約5億ドルを費やしていた。選挙期間中の総額では6億ドルに迫るとみられている。Shane Goldmacher, ”How Kamala Harris Burned Through $1.5 Billion in 15 Weeks” Nov. 17, 2024 [8]その一人が、かつての代表的な「製鉄の街」ヤングスタウンがあるオハイオ州マホニング郡の元民主党委員長デビッド・ベトラス。彼が同様の認識を語ったインタビューは『ルポ トランプ王国2 ラストベルト再訪』32~41ページに収録した。「従来の民主党に戻れ」という主張としては、やはりオハイオ州のトランブル郡の元民主党委員長ダニエル・ポリフカが似た認識を語った。こちらは『記者、ラストベルトに住む』75~88ページへ。