第1号で取り上げた中国内陸部でのICBM基地建設の動きについて、個別のサイロに焦点を当てた分析を実施した。新疆ウイグル自治区哈密(ハミ)に建設された大陸間弾道ミサイル(ICBM)用と見られるサイロのうち15ヶ所を高分解能(地上分解能1m)の合成開口レーダー(SAR)衛星で観測したものである。観測期間は2021年10月~2022年6月であった。
哈密をはじめとする中国のICBM基地及びその建設過程の観測は、これまでも米国等の研究機関が実施してきた。しかしながら、ICBM基地を構成する各サイロの掘削・機器設置等は一辺数十mの巨大なエアテントの下で実施されるため、その実態を知ることは困難である。例えばどのようなサイズのICBMを想定したサイロが建設されているのか、そこにICBMは実際に装填されたのか、またはテントだけが設置されたものの実際にはサイロが建設されないままのデコイ(囮)である可能性はないか、などの疑問には光学衛星画像のみではうまく答えることができない。
これに対してSARであれば、テントの膜を透過して内部の状況をある程度まで把握できるのではないか。本号で取り上げる観測作業は、仮説に基づいて実施されたものであり、以下はそのうち1ヶ所における結果を示している。ここから明らかなように、SAR画像はテント内部における建設活動の状況をかなり克明に撮像できており、上記仮説が支持された。内部構造の特徴等についての詳細は次号で取り上げる。