コメンタリー

西村真彦「オーストラリア国立公文書館での史料調査案内」(ROLES Commentary No.55)

<写真1>オーストラリア国立公文書館(写真はいずれも筆者による撮影)
 
1.     はじめに
現代の日豪関係は、2010年代以降の安全保障協力の深化を受けて、「準同盟」と表現されることも珍しくなくなった。たとえば海上自衛隊の護衛艦「もがみ」改良型をめぐるオーストラリア向け輸出契約交渉に象徴されるように、協力は運用・訓練の次元にとどまらず、防衛装備移転・産業協力の領域にまで拡大しつつある。

第二次大戦後の日本とオーストラリアは、オーストラリア側に対日不信が残ったこともあって、講和実現当初の時点から緊密な二国間協力が定着していたとまではいえない。それでも両国は、1950年代にアメリカを軸に形成されたアジア太平洋の西側同盟ネットワークの一端を担い、それぞれアジア太平洋を主要な外交舞台として、相手国の動向を意識しつつ、場面に応じて協力も重ねてきた。したがってオーストラリアは日豪関係のみならず、日米関係や東南アジア外交を含む日本外交にも関与する当事者であり、その記録は日本外交を検討する上で有力な手がかりとなる。オーストラリア国立公文書館は、そうした記録をたどるための重要な窓口である。

オーストラリア国立公文書館は、6つの州、2つの準州の州都にそれぞれOfficeを有しており、首相府や外務省(現・外務貿易省)、国防省といった連邦の主要省庁の史料は、主にキャンベラのNational Officeで所蔵されている[1]。以下の記述は、2025年11月にNational Officeを訪問した時点の情報に基づくもの(URLはいずれも本稿公開時点のもの)である。

なお、オーストラリア公文書館については篠﨑正郎氏と三輪宗弘氏による紹介[2] があり、本稿と重複する箇所もあることは予めご了承いただきたい。
 
2.     基本情報
名称:National Archives of Australia, National Office.
住所:Kings Avenue Parkes ACT 2600. 
ウェブサイト:
https://www.naa.gov.au/ 
閲覧室の開室時間:月〜金のAM 9:30〜PM 4:30
休室日:土日、祝日
 
3.     出発前に必要な準備と史料ファイルの検索
・利用者登録と訪問予約
 初めての利用の場合、所蔵史料のデータベースであるRecordSearch [3]から利用者登録を行う。ページ右上のLoginをクリックし、さらに“New to RecordSearch?”をクリックした先のRegisterから必要事項を入力すると、RecordSearchにログインするためのLogin Nameと、利用者カード番号がメールで送られてくる。これにより、RecordSearchにログインできるようになり、初回の閲覧室訪問の際にパスポードなどの写真付き身分証を提示して、物理的な利用者カードを受け取る。
 
訪問にあたっては、少なくとも5営業日前までの予約が求められている。国立公文書館ウェブサイトの事前請求ページ [4]で、氏名・住所や訪問日時、利用したい史料ファイル(item)情報などを入力する必要がある。フォーム上で直接入力できる史料ファイルは1点のみだが、同じフォーム上にファイルを添付する機能があるので、エクセルなどで利用したい史料ファイルを一覧にして提出すれば対応してもらえる。事前請求できる史料ファイル数の上限を40件とする案内もあるが、相談に応じるというスタンスである [5]。

閲覧室内には16席分が用意されている。利用者は数名程度のことが多かったが、家族やチームで訪れる利用者もいて一時的に10名を超えていることもあった。訪問予定が決まれば、余裕をもって予約するほうが安全だろう。

なお、訪問前の事前請求とは別に、追加で史料ファイルを請求することもでき、昼12時までに請求すれば翌日の午前11時ごろ、昼12時以降の場合は翌々日の11時ごろから利用できることになっている。ただ、史料の保護作業などを理由に予定通りに出納されない可能性もあるので、やはりなるべく早めに請求しておいたほうがよい。
 
・史料の検索方法
 先行研究で引用されている場合でなければ、RecordSearch(前述した所蔵史料データベース)で探すのが一般的な方法だろう。

RecordSearch内にAdvanced Searchというページがあり、そこでItemsをクリックすると個別の史料ファイルを検索できる。まずは、思いついた言葉をKeywords in titleの欄に入力して検索し、ヒットする件数が多ければ条件を絞っていくことになる [6]。デジタル公開の有無も条件に加えることができ、デジタル公開済みの場合はRecordSearch上でPDFをダウンロードできる。

目当ての史料ファイルが見つかった場合には、それを起点に関連ファイルを探すことも有効である。手がかりとして用いるのはControl Symbolで、当初の史料作成者が史料ファイルに振っていた番号である。省庁によっては年ごとの通し番号に過ぎない場合もあるが、外務省文書(A1838)の場合には、一定の意味が与えられていた。
 
例えば、戦後オーストラリアの対日政策(政治・全般)ファイルには、“3103/10/1”という番号が当てられている。このファイルを全て確認したい場合、Partとアスタリスクを追加して、“3103/10/1 Part *”と入力すれば、現状でRecordSearchに登録されているPart 1からPart 66までがヒットする。Part 66は第66冊程度の意味で、Part毎に概ね時系列でファイリングされていることが多い。また、“3103/10/1/*”と入力すると、”3103/10/1/1 Part 1”(史料ファイル名:“Japan - Industries - Pearl fishing including Japanese pearl divers in Australia”)といった、下位に分類されている史料ファイルがヒットするようになる。ほかにもControl Symbolの数字を少し変えて検索すると、キーワード検索のみからでは辿り着きにくい前後の関連ファイルを発見できる可能性もある。

このControl Symbolについて網羅的なコードブックが公開されていれば便利だが、筆者は本稿の執筆時点で確認できていない。最初の数字であるPrimary Number(前述の例では3103の部分)については、RecordSearch上のA1838に関する概要説明や、国立公文書館が刊行しているリサーチガイド[7]での例示があり、現状ではそれらから推測するのがよさそうだ。

また、電報やメモなどの個別具体的な文書を探す際、アメリカ国立公文書館所蔵の国務省文書(Record Group 59)であれば、発信者や電報番号などの情報を手がかりにファイルされているボックスやフォルダーをピンポイントで特定できることがある。しかし、オーストラリア外務省文書(A1838)についてはそのような手段は提供されていないようだ。
 
・利用請求(Access Application)
RecordSearch上で、各史料ファイルにはAccess Statusが明記されている。Openとなっていれば全て閲覧できるが、 “Open with exception”だと史料ファイル自体は公開されていて閲覧できるものの非公開部分があり、Closedは完全に非公開、 “Not yet examined”は要審査の状況にある。

Closedと“Not yet examined”の史料ファイルは、RecordSearch上から手数料なしで利用請求を申請できる。オーストラリアの公文書館法では、審査を求めている史料ファイル数が25件以下の場合には、90営業日内に決定通知を出すことになっている。ただし、審査にさらに時間を要することもあり、その場合には審査期間内に決定できなかったことが通知される。筆者の経験では90営業日を超えることも少なくなく、例えば2023年10月に申請した複数の史料ファイルが現在も審査中で、それとは別の史料ファイルではコロナ問題が深刻な時期を挟んだこともあってか決定まで4年半弱かかったケースもあった[8]。日本の外交史料館で利用請求をする場合にも期限(原則30日以内)が延長されることは珍しくないが、その場合には新たな利用決定期限が通知されるのに対して、オーストラリア国立公文書館ではそのような仕組みがないため見通しがつきにくい難点がある。関心のある史料ファイルがあれば、早めに利用請求するのが無難だろう。
 
<写真2>カウンター
<写真3>閲覧室内(職員の許可を得て撮影した)
 
4.     訪問当日の手順、館内での食事など
・National Office訪問当日の流れ
 閲覧室のカウンターまで到着すると、まずロッカーの鍵を手渡される。カウンターの少し手前にあるロッカーにバッグなどを収め、カメラやノートPCなど史料調査に必要なもののみを持参して閲覧室に入室する[9]。閲覧室のドアはロックされており、出入りする際にはカウンターか閲覧室内の職員に解錠してもらう必要があるが、職員に大きな手間はかけない。史料ファイルもカウンターで受け取る。閲覧室内に入ると、職員のデスクがあり、そこで利用者カードを提示することになっている。

 閲覧室内でのルールは、日本の外交史料館など他の文書館と多くの点で共通しており、特別な規則はない[10]。監視カメラこそあるものの、厳しい見回りや手荷物検査があるわけではなく、篠﨑氏も書かれているように利用者の良識に任されている。閲覧室内には職員が交代で1名常駐しており、相談すると丁寧に対応してもらえる。

 なお、閲覧室内ではエアコンがしっかり効いていて少し涼しいときがあったので、調節しやすい服装で訪問されることをおすすめする。
 
・館内での食事
 国立公文書館内には、Cafe Constitutionというカフェがある。カウンターで注文して席に座って待っていれば、料理を運んできてくれる。メインの料理(チキンカレー、チーズバーガーなど)は約20オーストラリアドル、ミドルサイズのコーヒー(Flat White)は約6オーストラリアドルだった。今回の滞在中は注文しなかったが、パイ類は約10オーストラリアドルのようだ。
 
<写真6>シドニー・キャンベラ間のフライトで搭乗したサーブ340+
5.     移動や宿泊
・キャンベラまでの移動
キャンベラ空港はコンパクトな空港で、数便の国際線はあるものの、日本からの直行便はない。関西在住の筆者は、伊丹空港から羽田空港、羽田空港からシドニー空港、シドニー空港からキャンベラ空港と、フライトを乗り継いでキャンベラまで移動した。なお、日本国籍で短期の史料調査に行く場合、オーストラリア入国のためにETA(Electronic Travel Authority)を取得するのが一般的だろうから、事前申請を忘れないようにしたい。

 三輪氏も提案されているが、キャンベラまで300km弱の距離にあるシドニーからバスで移動する方法もある。所要時間は3時間半前後で、現在も複数の会社が運行していて便数も少なくなく、チケットは比較的安価のようだ。国立公文書館の職員の話では、シドニーからキャンベラまで、自家用車など陸路で移動するのは珍しくないとのことだった。航空券の価格差など、事情があればシドニーからの陸路移動も検討してもよいかもしれない。
 
<写真7>Light Rail

・キャンベラ内の移動
公共交通機関として、従来からのバスと、2019年から一部区間で運行が始まった路面電車タイプのLight Railがある。国立公文書館の周辺はバスのみだが、ピーク時間帯の運行本数は多い。決済手段として2024年11月からMyWay+が導入され、これにより専用カードを購入する必要がなくなり、クレジットカードのMastercardとVisaのタッチ決済が利用できるようになった。バスを乗り降りする際に、バス車内の端末にタッチ(タップオン/タップオフ)する必要がある。Light Railの場合は停留所ホームでタッチする。

 また、Uberもサービスを提供しており、特に荷物が多いときには便利である。国立公文書館からキャンベラ空港まで利用したが、約6 kmの距離で10分ほどの乗車時間、料金は約17オーストラリアドルだった。
 
・宿泊先
 キャンベラ中心部のCivic(City Centre)周辺のホテルが、割高な傾向にあるが便利である。スーパーを含むモールや多くの飲食店、コンビニ、カフェなどが徒歩圏内にある。Civicから見てバーリー・グリフィン湖を挟んだ南岸側にある国立公文書館は、Route 2や6のバスで、乗り継ぎなく国立公文書館最寄りの停留所であるBarton Bus Stationまでアクセスできる(乗車時間は10分ほど)。

Civic以外では、Civicの北側(Braddon-Dickson方面)の Northbourne Avenue沿いにもホテルが多く、Light Railを利用できる。また、国立公文書館から南東側の Manuka/Kingston(Griffith近辺) 周辺にもホテルが点在しており、スーパーもある。
 物価については、Uberのドライバーが、オーストラリアの中でもキャンベラは特に高いと嘆いていた。スーパー(Coles, Aldiなど)はまだマシな印象を受けたので、うまく活用したいところだ。
 
 
<写真8>オーストラリア国立図書館。アメリカ・メリーランド州の国立公文書館(Archives II)の周りはリスが多いが、国立図書館の周辺には野生のウサギがいた。


・閲覧室の閉室後や土日の過ごし方
 キャンベラには見聞を広げるのに適した訪問先が少なくないが、オーストラリア国立図書館(National Archives of Australia)での調査も選択肢に入る。オーストラリア国立図書館は、書籍や契約データベース・マイクロフィルムのほか、政治家や外交官などの個人文書も所蔵している。閲覧室毎に異なる[11]ので注意が必要だが、Main Reading Roomは、国立公文書館の閲覧室が閉室している平日(金曜日を除く)夜間や土日も開館している。国立公文書館から国立図書館までの距離は約1.3 kmで、バスで2停留所分、徒歩では15分ほどで移動できる。
 
6.     おわりに
 円安や国際線航空券価格の高止まり、海外で先行したインフレにより、コロナ前の2010年代に比べると海外で史料調査を行う際の金銭的負担は重くなっている。オーストラリアも例外ではない。

この点で救いとなりうるのが、史料のデジタル公開である。オーストラリア国立公文書館では2023-24年度に、2つのプロジェクトに基づいて史料保存や利用頻度の観点から優先度の高い687,486件を電子化したという 。また、まだデジタル公開されていない史料ファイルについても、有料 ではあるもののデジタル化を依頼することができ、作業完了後にRecordSearch上から閲覧可能になる。関心のある史料ファイルの点数が少なければ、直接訪問する代わりにこの制度を使うのがよいだろう。

もっとも、デジタル化されていない史料ファイルに幅広くあたる必要がある場合は、依然として個別のデジタル化依頼のみで代替するのは難しい。一次史料を面で押さえ、オーストラリアから見た世界像を細部まで組み立てるには、少なくとも当面は現地での史料調査が有効であろう。



[1]キャンベラのNational Office以外に所蔵されている場合、Office間でILL(図書館間相互貸借) のような転送サービスはないので、各Officeに直接出向くか、有料でデジタル化を依頼する必要がある。

[2]篠﨑正郎「【軍事史関係史料館探訪】オーストラリア国立公文書館キャンベラ本館」『軍事史学』54巻1号(2018年6月)153-158頁。三輪宗弘『めからウロコの海外資料館めぐり』(クロスカルチャー出版、2019年)139-145頁。三輪氏はオンライン上でも紹介記事を公開されている。「アーカイブ情報あれこれ:オーストラリア国立公文書館(National Archives of Australia、キャンベラ分館)」<
https://guides.lib.kyushu-u.ac.jp/c.php?g=774809&p=5560114>.

[3] National Archives of Australia, “Explore the collection,” <
https://www.naa.gov.au/explore-collection>.

[4] National Archives of Australia, “Advance request for records form,” <
https://reftracker.naa.gov.au/reft100.aspx?key=09AdvReq>.

[5] National Archives of Australia, “Service guidelines for the National Reference Service (Fact sheet 16),” <
https://www.naa.gov.au/sites/default/files/2020-05/fs-16-Service-guidelines-for-the-National-Reference-Service.pdf>.

[6]国立公文書館のウェブページ上で、検索するうえでのtipsが紹介されている。 National Archives of Australia, “Keyword searching in RecordSearch,” <
https://www.naa.gov.au/help-your-research/getting-started/recordsearch-overview/keyword-searching-recordsearch>.

[7] Karl Metcalf, Near neighbours: Records on Australia’s relations with Indonesia (Canberra: National Archives of Australia, 2001), pp. 28-29, <
https://www.naa.gov.au/sites/default/files/2020-06/research-guide-near-neighbours_2.pdf>.

[8]オーストラリア国立公文書館が公開している2023-2024年度のデータでは、90営業日の審査期間内に決定が行われたのは、請求件数全体の87.64%にあたる21,375件だったという。National Archives of Australia, Annual Report 2023–24 (Canberra: National Archives of Australia, 2024), p. 37, <
https://www.naa.gov.au/sites/default/files/2024-10/NAA-Annual-Report-2023-24.pdf>.

[9]ロッカーの利用にコインなどを持参する必要はない(後述するオーストラリア国立図書館のロッカーも同様)。また、筆者は調査最終日にキャンベラ空港に直接向かう必要があったためロッカーに収まらないスーツケースを持参したが、カウンター内で保管してもらうことができた。

[10] National Archives of Australia, “Research centres,” <
https://www.naa.gov.au/help-your-research/research-centres>.

[11] National Library of Australia, “Opening hours,” <
https://www.library.gov.au/visit/opening-hours>.

[12]Annual Report 2023–24, p. 28.

[13] National Archives of Australia, “Copying charges,” <
https://www.naa.gov.au/help-your-research/using-collection/copying-charges>.