政府への業績評価と認知のゆがみについて考える
代議制民主主義の過程を扱う研究の中で、有権者の業績投票・業績評価は関心を集めてきた領域である。なかでも2010年代以降、党派性バイアス(Mian et al. 2023; Pickup&Evans 2013; Bartels 2002; 参考:Bullock and Lenz 2019)や個人志向の手がかりのバイアス(Healy et al. 2017; Huber et al. 2012; 池田 2001)といったように、業績投票における認知バイアスは研究の中心であった(Healy & Malhotra 2013; 大村 2018)。そして研究の広がりは、これらのよく話題となるバイアスにとどまらない。最近では、特定の有権者層に働く認知メカニズムにも研究が及んでいる。
この研究動向にもとづき、本稿は日本の有権者の業績投票における認知バイアスを、2つの有権者層に注目して分析する。1つ目は特定の宗教団体や宗派に信仰をもつ有権者層、もう1つは突発的な悪いできごとに遭って損害を被り、税制上の控除を受けた有権者層である。いずれも海外では研究が進みつつあるトピックである。日本の有権者を分析するとどういったことがわかってくるだろうか。