ROLES客員メンバーの
滋野井研究員の論考「[イラン戦争はどこまで続くか 2]『弾薬の残数レース』から『長期消耗戦』へ移行の兆し」が2026年3月17日に『Foresight』に掲載されました。
本論考では、イラン戦争の重心が、米国・イスラエルとイランの長距離攻撃能力や迎撃能力をめぐる「弾薬の残数レース」から、海上交通、エネルギー、生活インフラを含む長期消耗戦へ移行しつつある可能性を分析しています。
前稿では、米国は時間・弾薬・政治的制約から短期で出口を探す可能性が高く、イスラエルとイランにはそれぞれ長期戦の誘因があるものの、最終的には米・イスラエルの迎撃能力とイランの長距離攻撃能力の制約が戦争終結のトリガーになり得ると論じました。これに対して本論考は、3月中旬以降の情勢変化を踏まえ、戦争の時間軸を規定する要因が、単なるミサイルや迎撃弾の残数だけでは測れなくなっていると指摘しています。
特に本論考は、イランがホルムズ海峡を単に「閉じる」のではなく、「誰を通し、誰を止めるか」を政治的に使う段階に入っている点に注目しています。ホルムズ海峡、地域エネルギー拠点、安価なドローン、そして高価な迎撃システムとのコスト非対称性を組み合わせることで、イランは少ない資源で米国・イスラエル・湾岸諸国・世界経済に継続的な負担を与えようとしていると論じています。
また本論考では、米国にとって「地上戦」という選択肢が浮上しやすくなる構造を検討しています。空爆によってイランの軍事能力を損耗させても、それだけでは政治目的を達成できない場合、米国は特殊部隊の投入や限定的な地上作戦に誘惑される可能性があります。しかし本論考は、こうした地上戦は戦争の出口ではなく、むしろ長期消耗戦への入口になり得ると指摘しています。
その背景として、本論考はイランの「モザイク防衛」に注目しています。これは、国防を単一の司令塔に依存させるのではなく、複数の地域、組織、部隊に分散させる防衛構想です。革命防衛隊、正規軍、民兵組織が多層的に配置され、中央指導部が打撃を受けても各地域で抵抗を継続できるよう設計されています。これにより、米・イスラエルが斬首作戦や精密攻撃で中枢に打撃を与えても、それが直ちに戦争終結につながるとは限りません。
本論考は、イランがアフガニスタン戦争とイラク戦争の教訓を踏まえ、米国と対称的に戦うのではなく、相手の優位性を前提として、戦争を「終わらないもの」に変える戦略に適応してきたと分析しています。したがって、米国による限定的な地上介入や沿岸拠点の制圧は、短期的な戦術的成功をもたらす可能性がある一方で、その後に長期の非対称戦、局地抵抗、補給線への攻撃、都市部・山間部での消耗戦を招く恐れがあります。
結論として本論考は、イラン戦争の焦点は「誰の弾が先に尽きるか」だけではなくなったと指摘しています。重要なのは、イランがホルムズ海峡と域内インフラへの脅威を通じて、どれだけ長く世界経済に戦争コストを外部化できるか、そして米国・イスラエルがその圧力を地上戦に踏み込まずに無力化できるかです。この戦争は、「米国は勝てなければ負け、イランは負けなければ勝ち」という性質を強めており、長期消耗戦の地平へ移行しつつあると論じています。
詳細は以下よりご覧ください:
[イラン戦争はどこまで続くか 2]「弾薬の残数レース」から「長期消耗戦」へ移行の兆し
https://que.dailyshincho.jp/node/17134/関連ニュース:・2026.5.24
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