報告書公開

『日本トルコ交流秘史 イスタンブル旧総領事館の100年』が刊行


日本トルコ交流協会監修・ヤマンラール水野美奈子・佐々木紳編『日本トルコ交流秘史 イスタンブル旧総領事館の100年』(勉誠社、2025年12月25日=奥付の初版刊行日、2026年1月配本)が刊行されました。

本書には、ROLESが主催した国際セミナーシリーズ「建築と外交」の成果の一部が含まれています。

パオロ・ジラルデッリ「イスタンブルのペラ地区における建築と外交 政治的景観の変遷」37-47頁

ジラルデッリ青木美由紀「在イスタンブル旧日本大使館 来歴とその建築的価値」62−86頁

本書は、有力なトルコ研究者の多くが結集し、イスタンブルのギュミュシュスユ地区アヤズパシャ七十七番地に位置する、1925年以降、アンカラに大使館が移る1937年まで日本大使館として用いられた建物(旧パンギリス邸。1929年から日本政府の所有。また、1953年−2003年にかけて日本総領事館として用いられたため、「旧総領事館」とも呼ばれる)に取り組んでいます。

イスタンブル旧日本大使館・旧総領事館は、日本・トルコ関係者がその価値と重要性を高く評価してきたものの、一般に広く知られているとは言えません。本書では、トルコの伝統的な木造建築の邸宅を購入した旧日本大使館・旧総領事館について、建築史・文化史から政治外交史までの幅広い側面から取り組み、その国際社会とトルコの国民社会における文脈を明らかにしています。

本書は、学術的な関心と共に、日本の対中東さらにはグローバルな外交の貴重な資産となりうるイスタンブル旧大使館・旧総領事館の価値を、改めて明らかにしていると言えます。

ROLESは、2023年から2024年にかけて、日本トルコ外交関係樹立100周年記念国際セミナーシリーズ「建築と外交」を5回にわたり開催しました。国際外交において、しばしばニューヨークやジュネーブ、あるいはロンドンなどと同様の地位にあったイスタンブルという「外交都市」で、近代に新興国として参入した日本が、いかに自らを表現したのか。このシリーズでは、イスタンブルの外交建築群とそれにまつわる物質文化の中に、日本の旧大使館・旧総領事館とそこで展開された外交を位置づけようと試みてきました。その目的は、歴史を遡ることそのものにのみあるのではなく、今後の日本が外交の場でいかに説得的に自らの「来歴」を語りうるかを探るところにありました。

イスタンブルの外交地区の輪郭を彩る「欧米列強」の、石造りの壮麗な、しばしば威圧的な建築群の中に、地元の伝統的な木造建築の様式でひっそりと佇む旧日本大使館・旧総領事館は、西洋と非西洋の間での日本の立ち位置に、深い示唆を与えるのではないでしょうか。

国際セミナーシリーズ「建築と外交」
第1回「イスタンブルにおける近代日本外交の来歴」(東大先端研、2023年12月8日)
第2回「イスタンブルにおける建築と外交」(イスタンブル工科大学建築学部、2024年2月16日)
第3回「コンスタンチノープル会議(1876)と近代日本外交の黎明」(東大先端研、2024年4月22日)
第4回「中東王室の外交儀礼と日本:外交贈答品とその展示空間」(東大先端研、2024年6月5日)
第5回「芦田均とトルコーージャズ・エイジのイスタンブル」(東大先端研、2024年11月29日)