はじめに

本稿は、セルゲイ・キリエーンコ大統領府第1次官という一人の政府高官に焦点を当て、ウクライナ戦争下のロシア国家官僚機構の特徴について、法令等の規範的文書や新聞報道などの分析を通じて論じるものである。キリエーンコは、大統領府第1次官として従来から選挙対策、社会団体・政党との関係、青少年政策、人材育成や人事管理といったロシア内政全般のマネジメント業務を担ってきたが、2025年8月の大統領府機構改編を経て、彼の所掌事項は、いわゆる「近い外国」や「グローバルサウス」との関係にまで拡大している。大統領府の新設部局長にはキリエーンコに近い原子力部門(ロスアトム)の人材が抜擢されるなど、近年、クレムリンの政府高官の中で、キリエーンコは着実に存在感を高めてきた。本稿では、その影響力ある一人の「官邸官僚」を中心に据えて、近年の政治プロセスを整理することで、ロシア国家官僚機構の現況を把握することを目指す。こうした取り組みは、いずれ訪れる「ポスト・プーチン期」におけるロシア政治のシナリオを構想する上でも欠かせない作業であると筆者は考える。

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