コメンタリー

豊田耕平「UAEのOPEC脱退と分裂するUAE・サウジアラビアの戦略:石油市場・地域安全保障・経済競争」(ROLES Commentary No. 58)

2026年4月28日、国営メディアWAMはUAEが5月1日をもって石油輸出国機構(OPEC)から脱退することを発表した。世界第7位の石油生産量を擁するUAEの脱退により産油国間の協調が動揺する一方で、UAEはOPEC主導の協調減産に制約されず、「主権的、戦略的で国家利益に即した」[i]石油生産が可能になる。
UAEのOPEC脱退に関する議論は2026年2月以降のイラン戦争により突如生じたものではなく、少なくとも2020年頃には顕在化していた。2021年7月、UAEはOPECプラス協調減産における生産割当量への不満を公然と表明し、イエメン戦争における外交政策上の相違や「グローバルハブ」を目指す経済競争の激化と重なり、UAE・サウジアラビア間関係の複合的な緊張状態へと発展した。多くの専門家は今回のOPEC脱退決定の背後にも、サウジアラビアとの戦略的なビジョンの違いがあると指摘する[ii]
本稿では、UAEのOPEC脱退におけるエネルギー・地域安全保障・経済開発上の背景に着目したうえで、サウジアラビアとの各分野における分岐を考察する。
 
〇OPEC協調をめぐるUAEの不満
OPEC脱退に至る最も決定的な理由は、UAEがOPEC内で自国の石油生産能力に見合うだけの生産量を割り当てられていないことに対する不満である。
UAEのアブダビ国営石油会社(ADNOC)のスルタン・ジャーベル(Sultan Al Jaber)CEOはグローバルな石油ガス投資の不足を繰り返し指摘し、石油生産能力の急速な拡張を進めてきた。2020年に日量350万バレルであった生産能力は2024年には日量485万バレルに達し、ADNOCの生産目標である2027年日量500万バレルを早期に達成しようとしている(図1)。
UAEは生産能力の拡張を背景に、2021年からOPEC閣僚級会合において生産割当量の引上げを求めてきた。2024年、2025年には小規模な割当増加を認められたものの、現時点でUAEの生産能力と生産量には日量140万バレルもの差が生じている。OPEC内の他の産油国と比較しても、2025年にサウジアラビアは77%、クウェートは84%の生産能力を利用してきた一方で、UAEはわずか66%に過ぎないと指摘されている[iii]。未利用能力を維持するためのコストが増加していくことで、油価安定のためのOPEC協調の利益と自国の国益との乖離はますます大きくなっていた。
 
(図1)UAEの石油生産能力と実際の生産量のギャップ
(出所)The National
 
UAEの不満の裏側には、OPECを主導するサウジアラビアとの石油収入・ガス開発に関する優先順位の違いがある。
第一に、石油市場における課題は両国の脱石油依存の進展度合いにより大きく異なる。サウジアラビアは長期的な石油価格のコントロールを重視する一方、UAEは短期的な石油収益の最大化を優先する。この背景には両国の財政構造の相違がある。
サウジアラビアは国家収入の大部分を占める石油収入をもとに、大規模な政府支出を通じて未来都市「NEOM」や巨大テーマパーク「Qiddiya」などのメガプロジェクトを推進している。同国は多くの産油国と同様に経済多角化の途上にあり、財政均衡油価が90.9ドル/バレルと石油価格の自国財政に対する影響がまだまだ大きい[iv]。したがって、非石油部門が十分なリターンを生み始めるまで、一定の石油価格を維持するために市場をコントロールすることが最大の課題となる。
他方でUAEは、石油収入が依然として重要な財源であるとはいえ、非石油部門のGDPは全体の7割を超えている。非石油部門の拡大とともに石油価格が財政に及ぼす影響は低減し、財政均衡油価は50.0ドル/バレルと低水準である。すでに非石油経済が成熟しているUAEにとって長期的な価格コントロールはそれほど重要ではない。むしろ、石油需要が中長期的に減退していくと見込まれる中、早期に石油生産・販売を進めることで石油資源の「座礁資産化」を防ぐことこそが重要課題となるのである。
第二に、石油とともに生産される随伴ガスの活用という観点でも両国の置かれた環境は異なる。サウジアラビアは石油生産能力を据え置きつつ、ガスを中心に生産する非随伴ガス田を開発し、国内電力需要に充てていくことを優先している。最優先の課題は国内で発電用に利用される原油の代替であり、国営サウジアラムコによる石油化学能力の拡張やLNG・水素の輸出に関してはタイムラインを慎重に設定する構えである[v]。UAEではADNOCと政府系ファンドADQの合弁企業Ta‘zizが石油化学プラントの大規模拡張を計画し、また国営AI企業G42が米国NVIDIA、OpenAIらとともに世界最大級のAIインフラ「UAE米国AIキャンパス」計画を積極的に進める[vi]。しかしUAEは、現時点でさえガス供給の一部をカタールからのパイプライン輸入に依存しており、大量の原料ガス・電力を必要とする上記の多角化を進めるためには、石油とともに生産される随伴ガスも含めて自国のガス資源を最大限に活用していく必要がある。
これらの構造的な相違を踏まえると、UAEのOPEC脱退は、石油収入の早期最大化とガス生産の増強による経済多角化を加速させるためのエネルギー政策上の合理的選択として位置付けることができる。実際、両国の政策上の隔たりは5年以上前から表面化していたが、今回の戦争に伴うホルムズ海峡の封鎖によって、多くのOPEC諸国の石油生産が大きく制限されることとなった。その結果、UAEの脱退が及ぼすインパクトが相対的に緩和される市場環境が現出し、脱退の実行に至ったと考えられる。
 
〇地域安全保障をめぐる摩擦とブロック化
UAEのOPEC脱退はエネルギー政策上の自然な判断であるとともに、外交・安全保障戦略の転換も示唆している。両国は近年、イエメン内戦への介入やイスラエルとの「アブラハム合意」をめぐって異なる外交戦略を展開してきた。その結果として、今回の戦争におけるイランからの攻撃の烈度とその対応に関して両国で決定的な差が生じたことが、サウジアラビアを中心とした地域内の安全保障体制から距離を置くUAEの決断につながっていると考えられる。
UAEとサウジアラビアの立場の違いはイエメンへの軍事介入において顕著に表れてきた。2015年のイエメン介入開始時点では、両国はイラン及びフーシー派の影響力を抑制するという共通目標をもとに協調していた。しかし2017年頃から、UAEは紅海へのアクセスに基づく商業的利益、イスラーハなどのムスリム同胞団系組織への脅威認識を踏まえ、徐々に南部移行会議(Southern Transitional Council:STC)と連携する独自戦略へと向かった[vii]。南部の自治を目指すSTCへの支援は、統一国家の維持により国境安全保障の確保を目指し、イエメン正統政府を支持するサウジアラビアの方針と根本的に対立する。2025年12月から翌1月には、STCがサウジアラビアに隣接する「裏庭」ともいえるハドラマウト県とマフラ県を掌握することで、サウジアラビアは自国の安全保障上の脅威を強く認識し、イエメンをめぐるUAEとサウジアラビアの緊張は急速に高まった。UAEの対テロ部隊の撤退、STCの解散宣言やイラン戦争の勃発により事態は一定の収束を見たものの、両国の認識の隔たりが解消されたわけではない。
同様の対立は「アフリカの角」地域諸国における戦略にも及んでいる。2023年4月以降のスーダン内戦では、UAEが即応支援部隊(RSF)への武器・資金支援を提供していると指摘される一方で、サウジアラビアはスーダン国軍への支援を強めてきた。またソマリアにおいてはUAE企業のDP Worldが事実上の独立状態にあるソマリランド・プントランドでの港湾開発に関与しているが、サウジアラビアは一貫してソマリア政府を支持している。イエメンと同様、UAEはムスリム同胞団系組織への対抗、食料・港湾などへの商業的アクセスを目的に非国家主体とのネットワークを構築していると主張する一方で、サウジアラビアは紅海周辺を自国の国家安全保障に直結する地域と捉え、各国の主権・統一をより強調する傾向がある。UAEの積極的な地域外交は一部の地域専門家から「UAE的修正主義」や「分離主義者の枢軸」[viii]とも形容され、地域大国として既存秩序の維持を図るサウジアラビアとの根本的なアプローチの違いは、イラン戦争の前から明白であった。
両国を分ける最も重要な安全保障上の争点は、イスラエルとの関係正常化へのスタンスである。湾岸アラブ諸国は2010年代において、米国の中東におけるプレゼンス低下とイランへの脅威認識を基に、諜報・安全保障分野における非公式協力を拡大させてきた[ix]。その中でもUAEは2020年8月の「アブラハム合意」による関係正常化を通じて、米国・イスラエルの安全保障体制により深く組み込まれることを志向した。両国はさらに、米国とインドを加えた4か国による連携枠組み「I2U2」や「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」構想を通じて、幅広い経済領域でのパートナーシップも強化している[x]。他方でサウジアラビアはイスラエルとの関係正常化の条件としてパレスチナ国家の樹立を主張し、その姿勢は2023年10月に始まったガザ戦争により硬化している。米国・イスラエルとの関係深化が困難な中で、サウジアラビアは2025年9月にパキスタンとの戦略的相互防衛協定を結び、米国主導の安全保障体制の代替・補完を試みている。
2026年2月以降のイラン戦争における湾岸アラブ諸国へのミサイル・ドローン攻撃は、UAEとサウジアラビアの対照的な安全保障戦略を反映し、その分極化を加速させている。UAEは近隣諸国と比べて最も多くのミサイル・ドローン攻撃を受けているが(図2)、その一つの理由にはイスラエルとの安全保障上の連携があるとみられる。同国はイスラエルから防空システム「アイアンドーム」の提供を受けるなど[xi]、対イラン強硬姿勢を強めつつ米国・イスラエルとの戦略的協調を深化させている。対照的に、イランからの攻撃が相対的に小規模だったサウジアラビアは、パキスタンによる米・イラン間の仲介努力をトルコ、エジプトとともに支援することで、地域の緊張緩和を志向する「スンナ派のQUAD」を形成していると見られ始めている[xii]
 
(図2)イラン戦争における湾岸アラブ諸国の攻撃被害
(出所)INSS
 
サウジアラビアをはじめとするアラブ諸国がイランへの強硬な対応を回避したことで、イランからの最も深刻な攻撃被害を受けたUAEは、アラブ諸国との集団的対応の限界を強く認識するに至った。UAE大統領外交顧問のアンワル・ガルガーシュ氏はOPEC脱退発表の直前、UAE、サウジアラビア、バーレーン、クウェート、オマーン、カタールの6か国地域機構である湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council: GCC)が「歴史上最も弱い立場にある」と批判した[xiii]。さらにOPEC脱退後にも、UAEがGCCやアラブ連盟などの多国間組織への関与の在り方を再検討していると報じられた[xiv]。OPEC脱退はアラブ産油国を中心とした連携から距離を置く一方で、一貫して油価下落を望んできた米国トランプ政権を利する効果を持つ。UAEのOPEC脱退はエネルギー戦略のみならず、イラン戦争を契機に優先すべき外交関係を再評価する動きにも後押しされたのである。
 
〇イラン戦争による湾岸地経学の動揺
OPEC脱退の背景となったUAEとサウジアラビアの外交政策上の乖離は、安全保障領域だけでなく戦後の経済構想にも反映されている。湾岸地域の「安全神話」を基盤に成長してきたUAEの非石油経済が長期的な脆弱性を露呈した一方、サウジアラビアの石油収入をベースとした国内開発は相対的な強靭性を示している。その結果、UAEが米国との安全保障・経済連携を通じた国際的な信認回復を図るのに対し、サウジアラビアは紅海を軸とした物流・貿易ハブ化を模索するという、ポスト・イラン戦争の地経学構想の違いが鮮明になりつつある。
UAEはドバイを中心に、自由港・経済特区などの税制優遇を通じて、1980年代にはヒト・モノ・カネが集積するグローバルハブとしての地位を確立した。20世紀前半から中継貿易の拠点となることで蓄積した商業資本と人的ネットワークを大規模なインフラ開発や観光・不動産部門の発展に結びつけることで、現在では非石油部門がGDP全体の75%程度を占めるまでに成長した[xv]。他方でサウジアラビアの経済多角化は、2016年に発表された「サウジ・ビジョン2030」を契機として本格化した。未来都市「NEOM」をはじめとする大規模プロジェクトに向け、石油収入を原資とする政府主導の投資を行うことで、製造業や観光、クリーンエネルギーなどで新たな収入源を創出する取り組みを進めている途上にある。
しかしイラン戦争では、こうした経済構造の違いが逆説的な形で表面化した。両国が拡大を目指してきた非石油収入が大きな打撃を受ける一方、財政脆弱化の要因とされてきた石油収入が相対的な安定要因として機能している。GCC諸国の多くは豊富な外貨準備や巨額の政府系ファンド(Sovereign Wealth Fund:SWF)資産に支えられているものの[xvi]、特にUAEの「中東で最も安全で開かれたビジネス拠点」という外国投資家からの認識が変容し、非石油部門の基盤となる信頼が揺らいでいる。他方で、迂回パイプラインの活用と高価格環境によって、UAEとサウジの石油収入はある程度維持されている。原油価格や精製マージンの高騰により、2026年第1四半期のサウジアラムコの純利益は前年と比べて26%増加した[xvii]。今回の戦争は、国際的な商業拠点として地域をリードしてきたUAE経済の潜在的な脆弱性と、石油収入を土台とするサウジ経済の相対的な強靭性を浮き彫りにした。
加えて、両国の地理的条件の違いも、イラン戦争の経済的インパクトを大きく左右している。サウジアラビアでは東西パイプラインによる原油の迂回輸出のみならず、海峡内への物資搬入という観点でも、紅海沿岸の戦略的重要性への注目が高まっている。これまで遅延や見直しに直面していたNEOMは紅海に面し、開戦後の4月に欧州からエジプト、他の湾岸諸国への陸路輸送ルートを整備したことで、物流ハブとしての価値が改めて見出されつつある(図3)[xviii]。またサウジ海運局(Mawani)は紅海沿岸のヤンブーやジェッダとペルシャ湾岸の港湾・産業都市との間の効率的な輸送ルートを開拓し、ホルムズ海峡外へのアクセスが限定される他の湾岸諸国の物資輸送に大きく貢献している。その一方で、UAEもホルムズ海峡外のフジャイラやホル・ファカンを軸に原油・石油製品パイプラインの増強、AD PortsやEtihad RailによるUAE内物流網の増強を進めるものの[xix]、いずれもペルシャ湾に面していることから、イランからの攻撃に対する脆弱性は克服しがたい。実際に、フジャイラは開戦早々から攻撃対象となり、イランが設置したペルシャ湾海峡局(PGSA)はフジャイラとホル・ファカンをともに同国の監視下に置くことを表明している。今回の戦争は、サウジが有する戦略的縦深性と、ペルシャ湾岸への依存度が高いUAEの地理的脆弱性をも明らかにしたのである。
 
(図3)NEOMを通じた欧州-湾岸諸国間の新たな物流ルート
(出所)NEOM
 
こうした経済的・地理的な条件は、両国の戦後経済構想を見据えた動きにも反映されている。UAEは米国とのエネルギーやAIなどの領域における連携強化を通じて、グローバルな成長機会を捉えようとしている。米国とUAEは3月下旬に「米国・UAE AI加速パートナーシップ」の第1回会合を実施し、米国のUAEへのAI協力、UAEの対米投資に関するコミットメントをそれぞれ再確認した。米国とのAI協力はUAEがこれまで構築してきた貿易・投資ハブとしての地位に、先端技術のグローバルな拠点という新たな価値を付け加えることになる[xx]。さらにUAEは米国との間で、自国へのドル流動性を確保するための通貨スワップ協定に関する協議を進めることで、UAE財政が米国に支えられ強固であることを改めて国際社会に示そうとしている。つまりUAEは、米国からの安全保障を引き出すとともに米国の技術・財政との結びつきを強めることで、戦前の「グローバルハブ」としての安定性を回復しようとしているのである。
他方でサウジアラビアは、地域諸国との連結性を強化することで、紅海沿岸を中心とした地域のサプライチェーンを構築し、物流ハブ化に向けた動きを加速させている。Mawaniは5月に紅海沿岸のジェッダとヤンブーとエジプト・ヨルダン・オマーン・ジブチを接続する新たな海運サービスを開始するとともに、国際海運企業のMSCやCMA CGMとともにサウジ紅海沿岸を経由した湾岸諸国とアジア・欧州との間の輸送網を確立し始めている。加えてサウジはヨルダンとの間で鉄道建設に係る協議を加速させており、将来的にはシリアを通じて地中海に到達する物流回廊の開拓も見据えている[xxi]。サウジアラビアは紅海と地中海への接続可能性を活用してホルムズ海峡外のサプライチェーン再編を主導し、ポスト・ホルムズ危機におけるグローバルな物流ハブとしての地位を確立しようとしているのである。
UAEとサウジアラビアの対照的な戦後経済構想は必ずしもOPEC脱退の直接的な原因になったわけではない。しかしこの分岐は、UAEが米国を中心に域外パートナーとの連携を強化し、サウジアラビアが地域秩序を基盤とした取り組みを進めるという、両国の外交ビジョンとも軌を一にしている。OPEC脱退の一つの契機となった隔たりは、単に外交・安全保障上の立場にとどまらず、両国の長期的な経済構想にもまたがる広範な国家戦略にも及んでいると言える。
 
〇おわりに:分岐する湾岸諸国と日本外交への示唆
イラン戦争はUAEとサウジアラビアの広範な国家戦略上の差異を明らかにしているが、それは必ずしも両国の対立に直結しているわけではない。両国首脳は開戦直後から電話会談を実施し、OPEC脱退後もUAEのスハイル・マズルーイ(Suhail Al Mazrouei)エネルギー相は他の産油国と引き続き連携していくと表明している。
しかし、両国の立場の差はすでにイエメンやスーダンでの緊張関係につながっているほか、他国への経済的関与にも影響を及ぼし始めている。例えば「スンナ派のQUAD」の一角であるパキスタンではイラン戦争の開始後、UAEから長らく繰り延べされてきた35億ドルの融資の即時返済を求められた一方で、サウジアラビアから4月に30億ドルの財政支援を受け取っている。パキスタンの中東地域への外交的関与の在り方が、UAEとサウジアラビア双方との距離感の変化に結び付いている可能性が高い。同じくQUADを構成するエジプトやトルコも、UAEとの経済関係をこれまで通り維持するために慎重な二国間外交を強いられている[xxii]
中東地域の秩序構築に直接的に関与していない日本にとって、両国の緊張が自国との経済関係に及ぼす影響を懸念する必要性は大きくない。日本はUAEとサウジアラビアの双方にとって、主要なエネルギー需要国の一つであり、先端技術分野における潜在的なパートナーである。しかし日本がイラン戦争以後も両国からのエネルギー安定供給を確保し続けるためには、危機下にある湾岸経済とサプライチェーンを支えるために可能な協力を行い、政府間・企業間の信頼関係を強化することは極めて重要である[xxiii]。ここにおいて、日本がUAEとサウジアラビアに代表される湾岸各国が目指す国家像や地域における役割の分岐を正確に捉え、適切な協力の在り方を模索していくことは不可欠だろう。
 

[i]سهيل المزروعي (@HESuhail), “The UAE’s decision to exit OPEC and OPEC+ is a sovereign strategic choice rooted in its long-term economic vision, evolving energy capabilities, and enduring commitment to global energy security. This decision follows a comprehensive assessment of national production policy and future capacity and is guided exclusively by the UAE’s national interest, its responsibility as a reliable energy supplier, and its steadfast commitment to market stability. It is not driven by political considerations, nor does it reflect any division between the UAE and its partners. The UAE’s decisions are sovereign, strategic, and guided by national interest, not external speculation.” Twitter (now X), May 16, 2026.
[ii] Madani, Loubna (2026) “Beyond Oil: The UAE’s OPEC Exit,” Arab Gulf States Institute, May 18, 2026; Bianco, Cinzia (2026) ”The Postwar UAE and the Remaking of Gulf Politics,” European Council on Foreign Relations, May 15, 2026; Ulrichsen, Kristian Coates (2026) “Why the UAE’s OPEC Withdrawal Matters Beyond Oil,” Arab Center Washington DC, May 1, 2026.
[iii] Connelly, Colby, “What Does the UAE’s Departure Mean for OPEC+?” Middle East Institute, May 8, 2026.
[iv] International Monetary Fund (2025) Regional Economic Outlook: Middle East and Central Asia, October 2025.
[v] Hume, Robert (2025) “Aramco Slashes Its 2030 Blue Ammonia Ambitions by More Than 20%,” ChemAnalyst.news, March 7, 2025; Argaam (2025) “Aramco Puts on Hold 3 Chemicals Expansion Projects: Report,” September 10, 2025.
[vi] ADNOC (2025) “TA’ZIZ Announces $1.7 Billion Award to Build First Methanol Plant in the UAE,” News release, February 3, 2025; G42 (2025) “G42 to Lead a Consortium with US Partners to Build 5GW UAE-US AI Campus,” News release, May 15, 2025.
[vii] Dogan-Akkas, Betul (2020) “The UAE’s Foreign Policymaking in Yemen: From Bandwagoning to Buck-passing,” Third World Quarterly 42(4): 724-726; Esfandiary, Dina (2023) New Order in the Gulf: The Rise of the UAE, I.B. Tauris.
[viii] Krieg, Andreas (2025) “How Abu Dhabi Built an Axis of Secessionists across the Region,” Middle East Eye, March 28, 2025; Badi, Emadeddin (2026) “Sudan after the Iran War: Red Sea Front of the Saudi-Emirati Rift,” Amwaj.media, May 7, 2026.
[ix] Guzansky, Yoel (2015) “Israel and the Arab Gulf States: From Tacit Cooperation to Reconciliation?” Israel Affairs 21(1): 131-147.
[x] Janardhan, Narayanappa, and Gedaliah Afterman (2022) “I2U2 Summit Overlooks Geopolitics in Favor of Economic Collaboration,” Arab Gulf States Institute, July 26, 2022; Hussain, Afaq, and Nicholas Shafer (2025) “The India-Middle East-Europe Economic Corridor: Connectivity in an era of geopolitical uncertainty,” Atlantic Council, August 27, 2025.
[xi] Baker, Shoshana (2026) “Israel Sent Iron Dome to UAE during Iran War, Huckabee Confirms,” The Jerusalem Post, May 12, 2026.
[xii] Alhasan, Hasan (2026) “A New Middle Eastern Quadrilateral Is Taking Shape,” The International Institute for Strategic Studies, May 6, 2026.
[xiii] Christou, Alexander (2026) “Dr Anwar Gargash Says Iran's 'Ferocious' Attacks on Gulf Were Premeditated,” The National, April 27, 2026.
[xiv] “UAE Reviewing Multilateral Ties after OPEC Exit but Rules Out More Departures, Official Says,” Reuters, April 29, 2026.
[xv] Krane, Jim (2008) Dubai: The Vulnerability of Success, Columbia University Press: 106-135; Hvidt, Martin (2009) “The Dubai Model: An Outline of Key Development-Process Elements in Dubai,” International Journal of Middle East Studies 41: 404-407.
[xvi] Dutton, Jack (2026) “How Long Can Markets Hold Their Bet on Gulf Resilience as War Drags on?” Al Monitor, March 17, 2026.
[xvii] Saudi Aramco (2026) “Aramco Announces First Quarter 2026 Results,” Press Release, May 10, 2026.
[xviii] Rahman, Fareed, and Alvin R. Cabral (2026) “Saudi Arabia Repositions Neom as Logistics Hub,” The National, April 17, 2026.
[xix] AD Ports Group (2026) “AD Ports Group Establishes Consolidated Multimodal Inland Logistics Network to Strengthen UAE Industrial Supply Chains,” Press Release, May 22, 2026.
[xx] Soliman, Mohammed (2025) “From Crude to Compute: Building the GCC AI Stack,” Middle East Institute, December 10, 2025.
[xxi] Muhsen, Majda (2026) “Jordan, Saudi Arabia to Study Cross-Border Railway with Syria Connection,” Zawya, April 20, 2026.
[xxii] Akin, Ezgi (2026) “Amid Saudi-UAE rivalry, Turkey Courts Riyadh without Crossing Abu Dhabi,” Al Monitor, January 10, 2026; Wendel, Samuel (2026) “UAE-Saudi Fracture to Test Egypt’s Security-Economy Tradeoff,” Al Monitor, February 28, 2026.
[xxiii]小林周、高橋雅英、豊田耕平(2026)「緊急対談2:長期化するイラン戦争と「ポスト・ホルムズ」の中東・エネルギー秩序」東京大学先端科学技術研究センター双発戦略研究オープンラボ(ROLES)、2026年6月2日