コメンタリー

2024 / 09 / 18 (水)

ロシア北極圏における核実験場の動向(ROLES SAT ANALYSYS No.10)

1990年以降、ソ連/ロシアは核実験を実施していない。また、ソ連が保有していたセミパラチンスクとノーヴァヤ・ゼムリャーの2大核実験場のうち、前者はソ連崩壊直前に閉鎖され、その後はカザフスタンの独立によってロシアの管轄を離れた。 
これに対してノーヴァヤ・ゼムリャー核実験場は、依然としてロシア国防省第12総局(12GUMO)の管理下に置かれている。核爆発を伴う実験が1990年から実施されていないことは前述のとおりであるが、核弾頭の信頼性を確認するための未臨界実験等に使用されてきた。また、2019年には何らかの核エネルギー反応を伴う実験が行われた可能性を米国政府は指摘しているほか、原子力巡航ミサイル「ブレヴェストニク」の発射試験場もノーヴァヤ・ゼムリャー島に置かれている。 
さらに2024年夏以降、一部の核実験用坑道付近において、内部から排土を搬出する動きが観察されるようになった。特に9月時点に撮影された衛星画像からは、相当量の排土が確認でき、坑道内で大規模地下作業が実施されている可能性がある(周辺で行われている地上部分の掘削と関係している可能性もある)。これと同時にノーヴァヤ・ゼムリャー島内では大規模な施設建設、大型輸送船舶の接岸、原子力公社「ロスアトム」の社用機の飛来といた動きが衛星画像で確認されている。 
これからがロシアによる核実験再開の兆候であると即断することは現時点ではできない。ただ、過去に例のない大規模な活動が行われていることは間違いなく、それが何を目的としたものであるのかについて注視する必要があろう。

核実験用坑道再開の動き-1

核実験用坑道再開の動き-2

ロガチョヴォ空港に飛来したロスアトムの社用機

輸送船舶の来航

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