論文

2021 / 04 / 15 (木)

ROLES REPORT No.8 西山美久『歴史認識に関するロシアの内在論理』

はじめに
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ウラジーミル・プーチン大統領は、大祖国戦争(ロシアにおける独ソ戦の呼称。以下、本稿ではこれを用いる)で 多くの犠牲を出しながらもソ連が欧州諸国をナチス・ドイツから解放し、歴史に残る偉業を成し遂げたと喧伝してい る。このような見方は一般国民も共有しており、ロシアでは戦勝を絶対視する大祖国戦争史観が幅広く支持されて いる。
他方、欧州諸国は解放ではなく、ソ連による占領が戦後にもたらされたと捉えており、歴史認識を巡る双方の 対立が注目されている。
  とはいえ、ロシアは歴史認識で対立ばかりしているのではない。自らの正当性を内外に示すため、イスラエルや 中国とも協力を進めている。とすると、欧州諸国との対立のみならず、第三国との協力を図るロシアの取組みにも 着目する必要があろう。 
この点、多くの先行研究ではロシアと欧州諸国の対立に焦点が当てられている。諸外国との軋轢が顕在化する 中、ロシア外交における歴史の役割を分析した研究も発表されている。そうした中、対立ではなく協力に着目し、バ ルト諸国やドイツ等とロシアの間で創設された「二国間歴史委員会」を取り上げて「過去を共有する」国境を越えた 取組みも分析されている。
これらの指摘は非常に重要だが、プーチン政権が大祖国戦争史観を重視する理由を明らかにしたとは言い難い。  以上を踏まえ、本稿では、歴史認識を巡るロシアと欧州諸国の対立、ロシアと第三国の協力について検討し、な ぜプーチン政権が大祖国戦争史観を正当化するのか、その理由を明らかにしたい。

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