コメンタリー

2024 / 03 / 25 (月)

ROLES COMMENTARY No. 17 大庭三枝「キッシンジャーの訃報に寄せて:レアルポリティークがアジアに残したもの」

キッシンジャーの訃報のニュースを目にした朝、私はラオスとベトナムに赴く海外出張の最中だった。その日は、ちょうどラオスの古都ルアンパバーンに滞在しており、ラオス不発弾処理機関(UXO Lao)ビジターセンターを訊ねることになっていたのである。ベトナム戦争時、北ベトナムは、ベトナム本土の非武装地帯を避け、ラオス領内に南ベトナムへの補給路、すなわちホーチミン・ルートを通していた。アメリカは、このルートを潰すためにクラスター爆弾による大規模な爆撃を繰り返した。その際の不発弾が多くラオス領内には残存しており、未だに犠牲者が絶えない。センター内に展示されている写真やシアターで流されている映像は、この不発弾による被害を受けた痛々しい犠牲者の姿があった。

このような施設に赴く日にキッシンジャーの訃報に触れるとは、と私は複雑な気持ちになった。彼が、このような被害をもたらす原因となったラオス爆撃に大きな責任をおっていることについて、多少の知識があったからである。


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