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【テレビ解説】BSテレ東「日経サタデー ニュースの疑問」でイラン戦争を解説(池内教授)

池内恵教授が、2026年3月7日のBSテレ東「日経サタデー ニュースの疑問」(午前9:30-10:30)に出演し、イラン戦争の現状と基本構図について解説しました。

(番組タイトルと構成)
日経サタデー【イランの大規模報復で中東紛争どこまで拡大?原油や株価の先行きは?】
▼日本企業が中東から退避開始へ!▼外務省が渡航禁止勧告!▼米軍さらに大規模攻撃あるか?▼イランの次の指導者は誰に?▼急騰する原油の今後は?▼日米の株価どうなる?

(池内教授の発言部分を資料として記録。直近の番組キャスターの質問を含む)

(番組開始から14分ごろ、以下同じ)
番組キャスターの質問:池内さんはまず今の戦況についてはどこに注目していますか?

池内恵:今回の戦争の主な軍事的な争点は、イランには主要な軍事力がない状態ですが、唯一外の世界、特にイスラエルに脅威になるのはミサイルですね。核問題というものは騒がれていますが、(イランは)実際には核兵器を持っていませんので、実際には、長距離のミサイルを開発していて、それがイスラエルに届く、だからそれを除去しないといけないというのが、一番の、今回イスラエルがアメリカを引き込んで参戦した目的です。それを何週間で取り尽くすかというのがテーマになっています。(イスラエルと米国は)「もうすぐ取り尽くす」と言っていますが、同時に、今から制空権を完全に取って、イラン国内で徹底的にミサイル開発能力、それからすでに配備されたものを破壊するとも言ってる。それには何週間もかかるんですね。それと、実際にはイラン側もミサイルを破壊されること、発射装置も含めて破壊されることは予測しているので、もっと追いかけにくい分散型でいろんなところにある。また、ドローンですね。これを配備している。これはそれほどアメリカやイスラエルに大きな被害を与えられませんが、近隣の、特にホルムズ海峡、そしてその向かいにいる諸国、つまり湾岸産油国には影響を与えられる。これを、ではどこまでイスラエルとアメリカが追いかけ回して取り尽くすことができるのか、それに何週間かかるのか、その間、日本などへの影響はどうなるかというところが、主要な関心値だと思いますね。

(20分ごろ)
番組キャスターの質問:トランプ氏のイランの後継の発言も出てきてますが、その後継と目される人物ということで、番組としては三人出してますけども、池内さん、この後継というのはどうなっていくと考えられるのですか?

池内恵:まず今、日本や欧米の報道に出ている、この三人の人というのは、単に欧米の報道機関が知っている人というだけだと思いますので、ほとんどは意味はないと思います。要するに、今殺されたハメネイさんの息子、それからあの有名な初代最高指導者ホメイニの孫、それからアラーフィーさんという有名な宗教指導者がいるらしいという、それだけ(の情報)でこう語ってますので、イラン側から言えば、もしモジュタバ・ハメネイを後継者に選んだ場合は、要するに「我々は何の影響も受けずに、今後も進めますよ」という風に示す、そういうシグナルだとは思いますから、あまり変わらないということ。ただし、そうなった場合は確実にイスラエルが、即時に暗殺するので、ほとんどモジュタバ氏になったところで影響はないわけですね。で、しかもこれはどうなのか分からないわけですが、(アリー・)ハメネイの奥さんとか子供とか孫とか、そういう親戚とかが皆、一度の攻撃で殺されてますから、次男だけが生き残っているっていうことは、無傷で生き残っているってことは、ちょっと考えにくい感じがしまして、最初からまあ、あまり現実味がない話が出てる。それから先ほどのシナリオの話ですがトランプさん、(発言が)行ったり来たりするように見えますが、あの、つまりですね、複数のシナリオをおそらくトランプさんは見せられていると思います。それは私自身も含めて、事前に専門家の間では、どういうシナリオを描くかというのは議論されてきました。でトランプさんは、ですから、複数のシナリオのあちこちをつまみ食いして喋っているんだと思います。ですから、どういうシナリオが考えられているかということは、トランプさんの発言から推測することはできます。最善のシナリオからそれほど望ましくないシナリオまで、現状はまだそのどのシナリオになるか大統領もわかってないし、我々もわかってないということだと思います。

(24分ごろ)
番組キャスターの質問:(3つのシナリオを示した上で)池内さん、まあこれもかなりアメリカ・メディアの報道中心なので、アメリカ目線のシナリオになっているようにも見えますが、実際のところどうなっていく可能性が高いんでしょうか?

池内恵:これは「イランがどうなるか」というシナリオですが、これも事前に、外側から検討されていましたが、そこが一番不透明なところでした。正直に言うと、もうどこの国でも、イスラエルや湾岸産油国などの専門家でも、分からない。(イスラエルや米国が)攻撃をどれぐらい、どういう風にやるかというのは、これは半分はイスラエルやアメリカの問題だから分かるのだけれども、(イランが)どれだけ反撃できるかについて、ある程度計算するけれども、そんなに分からない。さらにはその戦争の影響によって、イランの内政がどう変わるかは、正直分からない。そこで二つあるわけですね。つまり、イランの中で政権の外から倒してくれる勢力が出るのではないかという期待。たくさん軍事攻撃をすれば政権が弱るから、弾圧できなくなるから、反対勢力が出てくるのではないか。その場合も国民として一丸となってデモをやって革命を起こすような勢力が出るか。これはほとんど可能性ないと思われていましたが。あるいは民族主義ですね。分離主義が出てきて政権を倒すのか、勝手に自分の土地を統治するか。そういう政権の外側から出てくる場合は、そういった、どちらかというとほとんどありえない革命で倒すというシナリオしかない。じゃあやっぱり政権の内側から、クーデタのような形で政権を取ってくれて、その政権がアメリカとイスラエルと和平してくれればいいと。そういう希望的観測があった。現状は、革命防衛隊と、そして最高指導者が殺害された段階で、事実上は革命防衛隊が暫定的に、もう戦争になっているわけですから、これはほぼ一緒と思ってよくて、現体制の中核が革命防衛隊なわけですから、戦争をやっているので、もうこれ生きるか死ぬかの戦争ですから、まず革命防衛隊が少なくとも戦時指導しますから、実際に指導してます。その中で形式上シンボル的に誰を最高指導者にするかというのは、もうこれは、今決めるんだったら、革命防衛隊が認める人がなるということですよね。その中で、革命防衛隊に穏健派がいると考えること自体が非常に間違ってますので、それは穏険派ではなくて、要するに裏切ってアメリカと合意してくれる人がいるんじゃないかということ。希望的観測でも、トランプ自身が、いくつか候補いたんだけれど、最初の攻撃でみんな死んでしまった、といったことを言ってるので、これ多分事実だと思うんですよ。そうすると体制内のめぼしい、実力を伴って、ある意味アメリカと内通してくれるような人すらも、死んでいる可能性があります。

(28分ごろ)
番組キャスターの質問:池内さん、湾岸諸国は今イランから攻撃を受けて、どういう思惑なんでしょうか?

池内恵:湾岸諸国はですね。アメリカに庇護される立場でアメリカがイスラエルと一緒にイランを攻撃する、どうしてもすると言ったら、反対して止めることはできないんですね。ただ、何とか止めてくれとは言っていた。そして恐れていたように、あるいは恐れていた以上にイランからの反撃は湾岸産国アラブ産油国に来た。非常に大きな打撃を受けています。彼らの石油が売れなくなっている。彼らの非常に高価なインフラが破壊されたり、価値が落ちている。ただし、ここでイランに攻めていくと、アメリカと一緒に攻めていくということになると、これは確実に、イランの体制が倒れない限りはイランから報復されます。ですので、必死に「攻撃には参加しない。ただ、防衛は当然自分の国ですから、自分で守りますよ」ということを言っている。その防衛というのがアメリカ、そしてヨーロッパの国々に支援されないと防衛できないですから、そこで「攻撃にも参加しなさい」と言われる可能性がある。ただ、実質的には湾岸産国が攻撃に参加することに。それほど戦況を変えるような大きな意味はないです。ないですが、その、アメリカとイスラエルを、世界中が、現地の国々が支援しているということを示す効果があるので、今このアクシオスのような非常にアメリカとイスラエルと関係が深いメディアが(湾岸アラブ諸国が)「もう参加している」というような、かなり誘導、認知戦に近いような誘導情報を流している。自国防衛に参加することを、攻撃、対イランの攻撃作戦に参加してるんだというふうに応じているというのが実態。ただしUAEは非常にイスラエルと近いですから、UAEだけが先に攻撃に参加するということは、あり得ます。

(32分ごろ)
番組キャスター質問:(中国とロシアの動きについて) 池内さんはどう見てます? 

(前のコメンテーターによる、中国とロシアは長期化を歓迎している、とする見方に続き)私も同様に見ていますね。兵器とエネルギーの二点から見ますと、もうすでにお話があったように、ロシアから見ても中国から見てもアメリカが中東で、イスラエルのために兵器を使ってしまうということは大変歓迎できる。また、特に中国の場合は、中国経済が非常に大きいですから、日本の何倍も買っているように見えますが、石油や天然ガスを買ってるように見えますが、中東に依存する割合は、日本よりも少ない、日本の半分ぐらいなわけですね。しかも中国の場合は、もし中東から来なくなればロシアからもっと買えばいいだけです。また、それをアメリカも許すと思いますね。天然ガスや石油製品に関して。そうしますと、エネルギー安全保障に関して、中国はそれほど、日本ほどは、困ってないわけです。そこで、もちろん、投資したものが焦げ付くのは嫌ですから、またかなり支援してきましたからね。それで、特にエネルギーに関しては多分損しますので、もし中国のものだけでも通れれば通してくれと要請をするのは当然だと思います。両方ともまあ長期化をある程度、歓迎している。まあロシアは完全に長期化を歓迎していると思いますが、中国も長期化に備えてはいる、備えることができていると思われます。

(37分ごろ)
番組キャスターの質問:(日本の発信のあり方について)池内さんはどこに注目します?

池内恵
日本の、アメリカに対するメッセージの出し方というのは(配慮が必要ではっきりと物を言えないという前のコメンテーターの発言を受け)私は、同意するので、日本ができることをもう一つ。本来は、間に立たされている湾岸諸国にどううまくメッセージを送るかですよね。攻撃をされている、でも攻撃に参加したくはない。しかし、自分の国を守りたい。そしてその自分の国を守るということは、日本へのエネルギーの供給に直結すると、そういう立場の、特にサウジアラビア、特にサウジアラビアですね。サウジが一番、この湾岸の六か国、アラブ産油国で一番大きいサウジが、ここは頑張って、イランやイスラエルと渡り合わないといけない立場ですから、サウジにどうモラルサポートするか、どうもその発信があまりできてない。(サウジには)もっと優先順位が高い国がありますので、そっちとは話していますが、日本とは、今のところ最近長期契約を結んだカタールとしか話ができていない。その点はもっとやるべき。それから、イランに対してはやはり、あの表向きどういうかはともかく、ちゃんと裏で、まあ今表向きはイランの反撃だけを非難していますけど、そうじゃなくて、実際には、非常に不規則な形で戦争が始まって、イラン側の痛みというのは理解しているということは、これは水面下ではちゃんと伝えるべきだと思いますね。