お知らせ

2025 / 03 / 31 (月)

ROLES活動報告(2025年3月)

ROLES活動報告(2025年3月)

本稿は、ROLESNEWSLETTER No.4に編集後記として掲載されたものである

3⽉31⽇に、東京⼤学⼤学院情報学環メディア・コンテンツ総合研究機構の渡邉英徳研究室が主導したシンポジウム「Beyond the Headlines ̶      データ・メディア・テクノロジーで読み解くガザ危機の深層̶ 」を共催したところである。産学連携(メディア各社が情報学環・渡邉研と進めるデータ・ビジュアライゼーション)、国際交流(カタールのアル=ジャジーラとレバノンのベイルート・アメリカン⼤学との交流)、⽂理融合(情報理⼯と中東紛争・安全保障研究)の要素を備えた重⼤イベントだった。ROLESからは私と⼩泉悠さんが登壇していわばコンテンツの提供と国際交流の⼀端を担うことで貢献を果たしたが、情報学環・渡邉研の活き活きとした組織運営には、⽬を⾒張るものがあった。ROLESも⾒習いたい。 

年度が改まると、4⽉2⽇には、上記シンポジウムのために来⽇したハニーン・シェハーデNYUアブダビ校客員助教授を迎えたRCASTセキュリティ・セミナーを開催。4⽉7⽇には例年通り、アブダビとカイロを拠点とするグローバルセキュリティ防衛問題研究所(IGSDA)のサイイド・ゴネイム所⻑のセミナーでシリアやガザの軍事・安全保障情勢を検討する。4⽉8⽇には⽯油輸出国機構(OPEC)事務局⻑が来⽇し、先端研で講演を⾏う予定である。そして4⽉20⽇にはエストニアのタルトゥ⼤学から訪問団が来⽇するのを迎え、先端研でバルト海沿岸地域をめぐる国際研究集会を開催する。昨年2⽉にROLESは⼤規模訪問団を組織してエストニアを訪れ、⾸都タリンの国際防衛研究センター(ICDS)やバルト国防⼤学でラウンドテーブルや講演を、⽂化・学術都市に位置するタルトゥ⼤学でワークショップを開いてもらった。ロシアとの国境の街ナルヴァではタウン・ミーティングで現地の知識⼈と語り合った。それに応じて、今年2⽉のICDSライク所⻑の来⽇に続き、タルトゥ⼤学も訪問先としてROLESを選んでくださった。もしかするとROLESは、現在、⽇本で最も活発にバルト海沿岸諸国と政治・国際関係で交流している機関となっているのではないか。何かについて「⼀番」になることは⼤切である。4⽉24⽇には、UAEの国⽴ハリーファ⼤学で教鞭を執るブレンドン・キャノン准教授の研究グループを迎え⼊れ、東⼤先端研でワークショップを開催する。キャノンさんは2019年に東⼤先端研を来訪し、RCASTセキュリティ・セミナーの⼀環として、紅海・アフリカの⾓の海洋安全保障についての報告を⾏ってくれた。今回はインド太平洋の海洋安全保障について、複数の研究者を率いて再び東⼤先端研を訪れてくださる。

 ⼤学⾏政・プロジェクト運営に慣れた⼈は「会計年度始まったばかりにどうやって招聘を⾏うのか?」と疑問に思われるかもしれない。しかしこれらの訪問客は全て、先⽅の⾃前の予算で来⽇してくれるため、ROLESは費⽤をほとんど必要としない。知的労⼒だけである。⼤学というものは、予算がなくとも、勝⼿に⼈が集まってきて議論して研究が成り⽴つ場所なのである。「予算ありき」で研究を⾏うのは本末転倒だと思っている。もちろん予算はあるに越したことはない。なければ訪問団の受け⼊れも会議開催も、⼤規模に頻繁に⾏うことはできない。しかしまず「⼈が集まってきて議論したい場所」であることが先決である。そのような場所にROLESがなりつつあるならば、嬉しい限りである。 4 ⽉に訪問客が集中するのは、もしかすると「桜の時期に⽇本に来たい」といった理由も背景にあるのかもしれないが、それも⽇本のソフトパワーであり、我々の資産である、と受け⽌めておこう。 (池内恵・先端研教授/ROLES代表)