このような状況下で、日本は中央アジアの「マルチ・ベクトル外交」の方針に則って、対中央アジア外交を調整する必要が生じている。中央アジア諸国の独立以降、日本外交は(1)1996年の小渕恵三衆議院議員団長の「中央アジア訪問ミッション」を皮切りとした、1997年の橋本龍太郎首相の「シルクロード外交」の展開およびADBを梃子とする「中央アジア地域経済協力(CAREC)」の設立、(2)2004年の小泉政権下での「中央アジア+日本」対話の枠組みの開始、(3)2015年の安倍政権下での「質の高いインフラ投資」イニシアティブ、日本企業の中央アジア進出を支える「Made by Japan in Central Asia」の推進といった地域外交を繰り広げてきた。ウクライナ侵攻に伴うロシアの影響力低下の結果として、中央アジア諸国は各国・各地域との間で「中央アジア+1」のプラットフォームを活発化させるなかで、日本は「中央アジア+日本」対話の枠組みを格上げし、首脳会議を実現し制度化するべきである。
そのために、まず日本の中央アジア地域に対する包括的戦略を明確にする「Japan's Strategy in Central Asia」を発信し、これに基づいて第一回「中央アジア+日本」首脳会議を実現する。この戦略の主目標は、民主主義、グッド・ガバナンス、イコールパートナーシップといった価値観に基づく中央アジアの持続可能な開発を支援し、日本との貿易と投資を拡大することにある。この目標を実現するために次の3つの方針を定める。第一は、安倍政権下の「質の高いインフラ投資」イニシアティブと日本企業の中央アジア進出を支える「Made by Japan in Central Asia」の継続。第二は、JICAを中心とする開発援助の拡大(詳しくは後述)。第三は、EUとの戦略的協力に基づく中央アジア支援の推進(詳しくは後述)。第一回「中央アジア+日本」首脳会議の開催時に、「Japan's Strategy in Central Asia」に基づく戦略的パートナーシップに中央アジア諸国が調印し、大きな戦略的見取り図と具体的なアクションプランを示すことに成功すれば、強力な国際的インパクトが生じる。
中央アジア諸国首脳(提供:KAZAKHSTAN'S PRESIDENTIAL PRESS SERVICE/AFP/アフロ)
JICAを中心とする開発援助の拡大
第二に、人材育成プロジェクトの拡大である。中央アジア諸国の開発戦略は産業振興の推進に重きを置いており、人材育成を非常に重視している。したがって、開発途上国におけるビジネス・イノベーション創出に向けた起業家支援活動として、2020年に始動したJICAのProject NINJA(Next Innovation with Japan)の活用が期待できる。