論文

2025 / 03 / 19 (水)

伊藤 庄一「中央アジアの新たな地政学ダイナミズム:重要鉱物と日米協力の可能性」 (ROLES REPORT No. 35)

 日本は2004年に「中央アジア+日本」対話の枠組みを立ち上げて以来、20年以上にわたり、西側の中で最も積極的に同地域の経済開発支援や人材育成等に関与してきた。だが、世界の分断化が進み、ユーラシア大陸の地政学的要衝である中央アジアで新たなパワーゲームが展開するなか、日本の中央アジア外交は再考を迫られている。

 ウクライナ戦争後の中央アジアでは、伝統的覇権国ロシアの影響力が低下しつつある。その一方で、中国が圧倒的な資金力を背景として、経済のみならず、治安や軍事等を含む、あらゆる分野で地域プレゼンスを拡大している。中露両国は、中央アジアに対する欧米の影響力浸透を牽制し、特に「カラー革命」の発生を予防する点で利害が一致する。かつてのロシアであれば、自らの「排他的勢力圏」と見なす中央アジアにおいて、中国のプレゼンスが過度に強まる可能性を危惧していたが、もはや中国の影響力増大を看過するよりほか選択肢を失った。欧米との関係が決定的に悪化したことを背景に、ロシアは国際政治のあらゆる場裏において中国の支持取り付けを最優先視し、さらに経済面でも次第に中国頼みの国になってしまったからだ。

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