イベント情報

ハマド・ビン・ハリーファ大学主催「日本・カタール対話」に参加

カタール財団傘下のハマド・ビン・ハリーファ大学のシンクタンクであるグローバル戦略研究所(GISR)主催の国際シンポジウム「広島からガザへ:記録と外交をめぐる日本・カタール対話」が2025年11月3日にドーハで開催されました。本シンポジウムは、現代の紛争において認知戦や情報操作によって事実や歴史が歪められるという問題意識を背景に、歴史の記録(アーカイビング)と外交という二つの営みが、いかにして真実と人間の尊厳を守りうるのかを、日本とカタールの経験を軸に議論することを目的として企画されました。

日本からはROLESの池内恵教授、滋野井公季連携研究員、東京大学情報学環の渡邉英徳教授、TBSの竹下隆一郎氏が登壇しました。

第一セッション「パレスチナにおける真実の戦い――情報戦と記録」では、情報操作や偽情報がいかにしてパレスチナの現実認識や国際的なナラティブを形成・歪曲してきたのかについて議論が行われました。日本からは竹下隆一郎氏が登壇し、広島をめぐる報道経験を踏まえつつ、日本および中東地域におけるジャーナリズムのあり方について分析が共有されました。

第二セッション「パレスチナを記録する————抵抗と平和の基盤としてのデジタル・アーカイブ」では、国家や権力によって事実が塗り替えられ、記録そのものが抹消されうる状況の中で、パレスチナに関する包括的なデジタル・アーカイブを構築する試みが紹介されました。滋野井公季客員研究員は、カタールおよび中東地域の研究機関との国際連携に言及し、デジタル・アーカイブやVRなどのテクノロジーを用いたプレゼンテーションが、既存の情報環境に対するカウンター・ナラティブとして機能しうる可能性について報告しました。

第三セッション「パレスチナの未来を構想する————日本の教訓とカタールの仲介の視点から」では、滋野井公季研究員がモデレーターを務め、中東地域の紛争仲介において存在感を示してきたカタール外交の意義、イスラエル・パレスチナ情勢の今後の見通し、さらに日本の戦後復興の経験が現下の国際情勢において果たしうる役割について、議論が交わされました。

池内恵教授は、中東情勢におけるカタール外交の意義や、日本の中東外交の特徴および復興支援に対する期待について発言し、登壇者との間で活発な意見交換が行われました。また、渡邉英徳教授は、広島・長崎のデジタル・アーカイブや平和教育の実践に加え、アルジャジーラやカタール財団と連携したガザをテーマとするデジタル・アーカイブおよびVR作品制作の取り組みを紹介しました。

開会に際しては久島直人カタール駐箚特命全権大使が基調講演を行い、閉会時にあたってはGISR所長のムハンマド・アリー・シーヒー大使が閉会の辞を述べました。

本シンポジウムは、パレスチナという現在進行形の危機を題材としながら、「アーカイブ」と「外交」という二つの長期的視点が、いかにして真実と平和を支えうるのかを問い直す機会となりました。日本の戦後の経験とカタールの仲介外交を結びつける本対話は、学術・政策・メディアを横断する新たな国際協力の可能性を示しています。

シンポジウムのプログラムと登壇者は以下の通り:

開会挨拶・基調講演
• ムハンマド・アリー・シーヒー(グローバル戦略研究所(GISR)所長)
• 久島直人(カタール駐箚特命全権大使)

1.パレスチナにおける真実の戦い――情報戦と記録
• ジョージ・ミクロス(ハマド・ビン・ハリーファ大学人文社会科学研究院教授)
• 竹下隆一郎(TBS特任執行役員)
• マーク・オーウェン・ジョーンズ(ノースウェスタン大学カタール校准教授)
• モデレーター:スティーブン・ライト(ハマド・ビン・ハリーファ大学人文社会科学研究院教授)

2.パレスチナを記録する————抵抗と平和の基盤としてのデジタル・アーカイブ
• ディーナ・マタル(ロンドン大学SOASメディア研究科教授)
• ハニーン・シェハーデ(ニューヨーク大学アブダビ校人文学客員助教授)
• ジャミーラ・ガッダール(アムステルダム大学メディア研究科助教授)
• 滋野井公季(東京大学先端科学技術研究センター連携研究員、ROLES客員メンバー)
• マリアム・カリーム(ノースウェスタン大学カタール校グローバル・ポストドクトラル・スカラー)
• モデレーター:アリー・アラヴィー(ロンドン大学SOAS人文学部助教授)

3.パレスチナの未来を構想する————日本の教訓とカタールの仲介の視点から
• ムハンマド・アリー・シーヒー(グローバル戦略研究所(GISR)所長)
• 池内恵(東京大学先端科学技術研究センター教授、ROLES代表)
• 渡邉英徳(東京大学大学院情報学環教授)
• スティーブン・ライト(ハマド・ビン・ハリーファ大学人文社会科学研究院教授)
• ハーリド・アル=フライフィー(グローバル戦略研究所(GISR)シニアリサーチフェロー)
• モデレーター:滋野井公季(東京大学先端科学技術研究センター連携研究員、ROLES客員メンバー)

日本の訪問団は、本シンポジウム参加の他、カタール財団、アルジャジーラ本部、アルジャジーラ研究所、中東国際問題評議会(MECGA)、メディアシティ・カタールなどを訪問し、国際情勢や連携に向けた有益な意見交換を行いました。