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2024 / 10 / 24 (木)

ROLES Review Vol.5『North Korea’s Global Activities』が発行されました

ROLES Review Vol.5『North Korea’s Global Activities』が発行されました。北朝鮮のグローバル活動に関する特集です。

https://roles.rcast.u-tokyo.ac.jp/publication/20240831-2

編著者の宮本悟・聖学院大学政治経済学部教授(東大先端研客員上級研究員)の巻頭言を紹介いたします。

北朝鮮の強靭さの源
宮本悟
(聖学院大学政治経済学部教授)
 
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の朝鮮労働党による一党独裁の全体主義体制は強靭である。国連安保理や西側諸国からの制裁にもかかわらず、体制が揺らぐ様子もない。それは、北朝鮮の多くの国民が、最高指導者や党など政権への忠誠心を持ち、国家の誇りを抱いているからである。多くの人はこれに疑問を抱くだろうが、これは北朝鮮に限ったことではない。
近年、政治学では、アメリカやイギリスなどの強靭な民主主義体制と考えられてきた国々での「民主主義の後退」が議論されている。それと共に、いずれ民主化するであろうと想定されていた権威主義・全体主義体制にむしろ強靭性が見られることが注目を集めている。
中国のように高度な経済発展や国際的な大国化による国家の誇りが中国の体制の強靭性の要因であることはよく知られている。しかし、経済発展や大国化といった条件を満たしていなくても強靭性が見られる場合がある。北朝鮮もその一つである。北朝鮮は、高度な経済発展も国際的な大国化も成功していない。
北朝鮮の強靭性と持続性を可能にした要因の一つが国際ネットワークにあると考えられる。
北朝鮮は、安全保障を中心とした技術や人的サービスの交流などを利用してアジア・アフリカ諸国などと国際ネットワークを構築してきた。北朝鮮は、体制の強靭性と持続性に必要な資源を国際ネットワークから獲得し、アジア・アフリカ諸国を中心にした国際的な支持を取り付けてきたと考えられる。
西側諸国において、北朝鮮は国際的に孤立している異様な国家または地域という印象があるが、実際には、北朝鮮は2024年1月の時点で、国連加盟国193カ国のうち159カ国と国交がある。北朝鮮に対する経済制裁に効果が見られなければ、時折「中国やロシアが援助しているからだ」という弁明が見られたが、ことの真偽はともかく、その弁明は北朝鮮が中国やロシアと関係が深く、国際的に孤立していないことを認めているのである。
では、北朝鮮は実際にはどのような国際ネットワークを構築してきたのであろうか。それを調べたのが、研究プロジェクトである科研費基盤(B)「北朝鮮の体制の持続性の根拠:中東・東南アジア・アフリカとの国際的ネットワーク」である。この特集号は、この研究プロジェクトに参加した7名の研究者がそれぞれの研究対象国と北朝鮮の関係について調査した成果を論じたものである。
北朝鮮とアジア・アフリカ諸国とのネットワークは、経済的なネットワークではなく、血や信念のネットワークともいえるものであった。経済的なネットワークしかなければ、その関係は脆いものである。金の切れ目が縁の切れ目である。しかし、米国やその同盟国に対して、共に戦ってきた血や信念のネットワークはなかなか切れるものではない。それが今でも北朝鮮の体制を支えているのである。

本研究はJSPS科研費 JP20H01470の助成を受けたものです。

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