広島市立大学広島平和研究所とROLESの主催によるジョイント研究フォーラム「ウクライナでの戦争犯罪責任を追及する」が10日、広島市の広島市立大学サテライトキャンパスで開かれた。国際刑事裁判所(ICC)の登録弁護士アキーレ・カンパーニャ氏が約20人の参加者を前に、責任追及のメカニズムと現状について講演した。
カンパーニャ氏は、ウクライナの首都キーウ近郊ブチャで起きた虐殺の遺族や、南部ミコライウ州で拷問の末に殺害された男性の遺族らが、ICCに被害者として裁判参加を申請したケースなどを担当している。講演ではこれらの例に加え、日本で被爆者らが国を訴えた原爆裁判の例も示しながら、被害者が置かれた立場の難しさを説明。「平和とは、被害者が生まれないこと。侵略戦争を起こしたロシアのプーチン大統領のような政治家が責任を問われるシステムを構築しなければならない」と語った。
参加者の1人からは、スマートフォンやSNSなど近年の技術の発達と戦争犯罪裁判との関係を尋ねる質問があった。アキーレ氏は、ブチャで被害者の遺族の1人が手持ちのスマートフォンで遺体を撮影し、それが状況を説明する資料として役立った例を紹介するとともに、「逆に、危険な面も持っている」と指摘。占領したロシア軍の写真を撮っていたウクライナ人男性が拘束され、殺害された例もある、と話した。
フォーラムに先立ち、初来日のカンパーニャ氏は広島平和記念資料館や原爆ドームなどを訪問。「深く心を揺り動かされた」と述べた。