ウクライナでのロシア軍による戦争犯罪を追及する国際刑事裁判所(ICC)登録の弁護士アキーレ・カンパーニャ氏を迎えて、セミナー「聞かれない声をICCに届ける」が9日、立命館大学で開かれた。立命館大学人文科学研究所「変革的正義研究会」とROLESの共催で、立命館大学の越智萌准教授がモデレーターを務めた。20人余の学生たちが参加した。
カンパーニャ弁護士はセミナーで、拷問の末に殺害された男性の遺族がICCに裁判参加を申請した例を取り上げ、被害の実態を説明した。
ウクライナ南部ミコライウ州東部の村に暮らしていたこの男性(当時52)は2022年、侵攻したロシア軍が周辺を占領した際、村人の代理としてロシア軍と折衝していて、行方不明になった。遺体は、ロシア軍が撤退した後の翌年、用水路で見つかった。歯を削られたり爪をはがされたりといった拷問の痕跡が明らかだったという。
その遺族は、キーウ郊外のブチャで起きた虐殺の遺族がロシア軍の犯罪行為を国際法廷に訴えているとニュースで知り、その取り組みを進めるカンパーニャ氏のチームに連絡。村人たちの詳細な証言記録や遺体の検視報告書も備え、ICCに昨夏、裁判参加申請を出した。ICCは刑事裁判所だが、被害者の参加が広く認められており、遺族代理人が法廷で証言したり、被害の賠償を受けたり、といった民事裁判の要素が採り入れられている。
参加者の1人からは、現行制度下の国際裁判で被害者はどのような過程を経るのか、との質問が寄せられた。カンパーニャ弁護士は「被害者が最初に望むのは、正義が回復されることであり、まず責任者が罰せられるなければならない。次に補償となるが、それは莫大な金額になる。ウクライナの場合、G7と欧州連合(EU)が凍結した約3000億ドルのロシア資産を利用する方法が考えられる」と説明した。
この企画は、早稲田大学で前日の8日、早稲田大学大学院法務研究科とROLESの共催で開かれたフォーラム「ウクライナでの戦争犯罪の責任を問う」に続く企画。ROLESの国末憲人特任教授が全体のコーディネート役を務める。