ウクライナでの戦争犯罪を追及するサンマリノの弁護士アキーレ・カンパーニャ氏を招いて、フォーラム「ウクライナでの戦争犯罪の責任を問う」が8日、早稲田大学で開かれた。早稲田大学大学院法務研究科とROLESの共催で、授業の一環として出席した学生のほか、法律家、外交官、ジャーナリストら約70人が参加した。
カンパーニャ氏は、ウクライナの首都キーウ近郊のブチャでロシア軍が住民を虐殺した事件や、南部ヘルソン州でロシア占領中に住民が受けた拷問などについて、国際法廷への住民の訴追や裁判参加を支援する活動に取り組んでいる。
ロシア・ウクライナ戦争はロシア軍の侵略行為に始まった。カンパーニャ氏はこれを、「国連憲章に反する明白な違法行為」と断じる一方で、国際刑事裁判所(ICC)の枠組みでは裁けない」とも説明。ICC設立を決めたローマ規程にロシアが参加していないためだが、一方で、ロシア兵がウクライナでかかわった戦争犯罪、人道に対する犯罪、ジェノサイドは裁くことができるため、「これらの犯罪に手を染めたロシア兵や、それを命じたロシアの指導者らを裁くのが重要だ」と主張した。
また、国際裁判で戦争犯罪を問う際には、被害者の視点が重要だと強調。「過去に戦争犯罪を裁いたニュルンベルク裁判や東京裁判では、被害者の視点が欠けていた。しかし、平和とは、戦争の被害者をなくすこと。これまでは、政治指導者の間の合意による平和に過ぎなかった」と分析した。
また、「経済犯罪で5年や10年の禁固刑を受けるのに、戦争で人を殺しても罪を問われないのは、法的な一貫性を欠く」と力説。「ロシアの責任は問われなければならない」と述べた。
戦争犯罪を追及するうえでは、法律家だけでは不十分だとも指摘。遺体を調べる医師、兵器について詳しい軍事専門家らとチームを組むとともに、被害者や遺族にトラウマを与えないよう精神面心理面でのトレーニングを受けるのが望ましい、と語った。
講演後は、活発な質疑があった。参加者の1人は「被害者がICCで賠償を受けるまでにはどれほどの時間がかかるか」と質問。カンパーニャ氏は「ICCは欠席裁判を認めていないので、被告人が出廷しないと裁判ができないが、一方で時効もない。ロシアについては、被告の誰も出廷していないので、時計が止まっている状態だ」と説明した。
また、「日本に何ができるか」との質問に対しては、「日本の法律家もスキルを磨いてぜひ参加してほしい。会議やウェビナーを開いて意識啓発に取り組む営みも重要だ」と話した。
フォーラムは英語で実施されたが、古谷修一研究科長が日本語で要約した。