いわゆる「アブラハムの宗教」に属する諸宗教を分断する差異化の契機について、ナザレのイエスと律法の関係はまさしく表徴的であるといえるでしょう。神の啓示としての掟(ノモス)の有効性と救済史の完成(テロス)としてのメシアの同定という一神教における二つの核心的なテーマが交差するこの場においては、ユダヤ教・キリスト教・イスラーム教の間の離合がある先鋭的な表現をともなって現れていると考えられます。
本研究セミナー「イエスと「掟」:新約聖書、タルムード、およびクルアーンにおけるトーラーの確証の問題」では、マタイ5:17におけるイエスの有名な言葉「私が律法や預言者を廃棄するために来た、と思ってはなりません。廃棄するためではなく、成就するために来たのです」の解釈の系譜を綿密にたどることで、掟とメシアをめぐる一神教伝統の「捩れ」の関係に新たな光をあてることが試みられます。
講師のホルガー・ツェッレンティン教授(テュービンゲン大学))は、古代末期を主たる研究対象とし、一神教の法文化、キリスト教ユダヤ派と初期イスラーム、宗教論争といった幅広い分野に亘って、傑出した業績をあげている宗教学者です。本セミナーでも同氏の広範なパースペクティブに基づく鋭い分析が提示されることが期待されます。
本講演は、山城貢司特任研究員がプロジェクト・リーダーとして推進する国際研究プロジェクトHumanitas Futuraの一環として、開催されます。
開催日時:2024 年2 月 23日(金)午前10:00-11:30
開催形式:ハイブリッド形式
開催場所:東京大学駒場第二キャンパス3号館中2階セミナー室
(オンライン参加者には、後日URLを送付)
使用言語:英語
講師 :ホルガー・ツェッレンティン教授(テュービンゲン大学)
レスポンダント :志田雅宏博士(東京大学)
主催:東京大学先端科学技術研究センター 創発戦略研究オープンラボ(ROLES)
共催:東京大学文学部・大学院人文社会系研究科宗教学宗教史学研究室