はじめに
2022年2月24日、ロシアは、北京冬五輪閉会直後にウクライナに侵攻した。このロシアの侵攻に対して、国内外で様々な考察がなされており、当初はプーチン大統領の健康・精神状態に関するものから、北大西洋条約機構(NATO)東方拡大がプーチン大統領を刺激したため、今回のウクライナ侵攻は米国や西側の責任であるという論調まで様々ある。また、2014年のロシアによるクリミア併合からの流れで今般の侵攻を分析するものが多くある。
一方、ロシアが他の主権国家に軍事侵攻したのは今回が初めてではない。2014年のクリミア併合よりもさらに6年遡る2008年、ロシアは、旧ソ連圏のジョージアに侵攻した。このロシアによるジョージア侵攻(ジョージア紛争) は、今回のウクライナ侵攻を考える上で、きわめて示唆に富む。なぜなら、ジョージアとウクライナの歴史は重なる部分が少なく無く、また、ジョージア紛争は、ソビエト連邦(ソ連)時代の1979年のアフガニスタン侵攻以来、ロシアが初めて他国に軍事侵攻した事例だからである。従って、今般のウクライナ侵攻を2014年クリミア併合からではなく、2008年ジョージア紛争からの流れで理解する必要があるというのが筆者の考えである。よって、そのようなジョージアという国の情勢を、ウクライナが抱える課題と交えて概観する。
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