論文

2023 / 03 / 31 (Fri.)

ROLES REPORT No.22 小島吉之「ロシアのウクライナ侵攻(2022年2月)と米国の情報開示 ― 情報による戦争抑止の可能性に関する考察 ―」

情報で戦争を阻止することは可能か。米国がロシアのウクライナ侵攻に関して、それを示唆するロシア軍の動向に関する情報を一部、開示したことは、その可能性を追求するための試みだったように思われる。だが結果として、その試みは失敗したと言わざるを得ない。なぜなら周知のように、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は同年2月24日、ウクライナへの侵攻を決断し、同国の北部、東部、南部の三方向から軍隊を進駐させ、支配地域としたからである。その後、NATO(North Atlantic Treaty Organization)諸国からの軍事援助を受けたウクライナが頑強に抵抗し、北部のロシア支配地域を奪還することに成功したが、東部や南部ではなお、ロシアとの激しい戦闘が続いており、2023年3月現在、戦闘終結への道筋は見えない状況である。
果たして情報で戦争を阻止しようとした米国の試みは無意味だったのだろうか。もし無意味だったとしたら、なぜ米国はその試みを推し進めようとしたのだろうか。あるいは、もし無意味ではなかったとしたら、米国がロシアの行動を抑止するために足りなかったものは何だったのだろうか。また、何が米国の試みを台無しにしたのだろうか。

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