セミナー「Remembering Otherwise: Religion, Memory, and Transmission」(イタリア・ナポリ東洋大学)開催報告
【日時】2026年1月30日(金)17:00-19:00
【場所】イタリア・ナポリ東洋大学
【参加者】
平藤喜久子(國學院大學教授・ROLES)
キアラ・ギディーニ(ナポリ東洋大学教授)
伊達聖伸(東京大学大学院総合文化研究科教授)
ファビオ・ランベッリ(カリフォルニア大学サンタ・バーバラ校教授)
ルカ・ミラシ(東北大学准教授)
【形式】対面
忘れたくない記憶がある。一方で、忘れたいにもかかわらず忘れられない記憶もある。
長く伝えていきたいこと、そして伝えなければならないもの―聖なる記憶、悲劇の記憶。
こうした「記憶の継承」を主題とする国際的な学術イベント Remembering Otherwise: Religion, Memory, and Transmission が、2026年1月30日、イタリア・ナポリ東洋大学において開催された。紀元79年のヴェスビオ山噴火によって一瞬にして火山灰に埋もれたポンペイ遺跡に近接するナポリという場所は、聖性と悲劇性を併せ持つ記憶の問題を考察するうえで、きわめて象徴的な開催地である。
本イベントは、東京大学ROLESプロジェクトの平藤喜久子と、ナポリ東洋大学のキアラ・ギディーニによって共同企画された。
当日はまず、ROLESにより2024年に制作されたドキュメンタリー“Building Eternity: The Kami–Human Landscape of Izumo Taisha”(『永遠を建てる——出雲大社 カミとヒトの風景へ』)の上映が行われた。本作品は、60年に一度行われる出雲大社の式年遷宮を通して、建築・儀礼・技術の更新によって聖なる記憶がいかに継承されてきたのかを描くものであり、「聖なる記憶の更新」という視点から、本企画全体の問題意識を共有する導入となった。上映に先立ち、平藤よりドキュメンタリーの趣旨説明および本イベントの目的についての解説が行われた。
上映後には、伊達聖伸による基調講演「出雲大社から戦後80年、そして東日本大震災の記憶へ」が行われ、宗教的記憶、戦争、災害の記憶をめぐって多角的な視点からの考察が提示された。
続いて、カリフォルニア大学サンタ・バーバラ校のファビオ・ランベッリより、日本の雅楽における伝承と記憶の問題についての発表が行われ、さらに東北大学のルカ・ミラシより、東日本大震災の記憶を扱う東北大学のデジタルアーカイブ構築の取り組みが紹介された。
当日は、ナポリ東洋大学の日本研究分野の研究者および大学院生を中心に、約40名が参加した。プログラム終了後も会場では活発な質疑応答と意見交換が続き、宗教・記憶・メディア・継承というテーマの横断的な可能性が確認された。
なお、ナポリ東洋大学では、本企画を契機として本テーマをさらに発展させ、カリフォルニア大学サンタ・バーバラ校との連携のもと、書籍化を目指す構想が示されている。